大切なこと

仕事だけど、飛行機に乗るだけなので、過ごしやすいラフな格好をしてきた。

搭乗手続きをすると、満席だったので真ん中席。

大型連休初日だしな。なんて思った。


北海道には久しぶりに帰る。着いたら仕事は終わりなので、お母さんに会いに行こうと思ってる。

お母さんの大好きな芍薬が時期より早くお花屋さんで売ってたので、昨日帰りに買ってきた。

とても懐かしく、いい香り。

飛行機に乗ると、小早川がいた。

「おはよう。小早川」


近くに寄ってきた小早川がこそっと、「先輩!さっきめっちゃタイプの人いたんですよ。ガン見しちゃいました。」朝から、何事。

「それは、、、頑張ってね。」本当立ち直り早い。


席に着くともうすでに男性が窓側で寝ていた。朝早いしな。なんて、思ってちょっと可愛く思う。

「ごほっ、、」窓側の男性が咳をしていた。

体調悪いのかな?律儀にマスクまでしてるし、とか職業柄人を観察してしまう。今日は、お客様側だからそーゆーの考えない様にしよう。

なんて考えながら、私も朝早かったので、うとうとと、眠りに落ちた。




昔飼っていたネコが、よく私の首もとに寝ていた。

触れるとふわふわでとってもくすぐったい。

ふわふわだなぁ。




目が覚めた。気がついたら寝てた。

何だか左側に重みを感じる。見ると、寝ていた男性が私の肩に寄り添って寝ていた。びっくりしたけど、相当疲れてるのかな。そんな事を考えた。

時より咳をして、苦しそう。だからなのか、若干あつい気もするけど。

そう考えると、何だか無下に動けなくて、目の前のモニターを見ていた。

たまたまやっていた映画が、恋愛映画で困る。





「…す゛みま゛せん゛」頭が急に離れた。

がらがらの声が聞こえた。


横を見ると、ちょっと顔が赤い。え、熱あるのかな?

心配になった。

「お疲れですね。」そう、口をついた。目元まである髪が少し目の鋭さを強調してる気がするけど、大学生なのか若そうな人だな。あ、観察し過ぎた。

鞄の中によく入れてるお菓子達。のど飴を見つけて、

「大丈夫ですか?苦しそうですけど、飴よければ。」

あ、、距離感変かな?なんて考えたけど。

ま、気になるし。



「、、、ぁ゛りがとうございます゛」そう言って、男性は素直に受け取ってくれた。


まだちょっと咳をして辛そう。仕事柄気になってしまう。また言葉がついて出た。

「辛そうですね。何か飲みますか?」

その時、近くを小早川が通った。

「小早川!お茶持ってきて。」小さく話掛ける。

仕事モードの彼女、「かしこまりました。」そう言って、悪戯にウインクをしてみせた。

体調悪そうな男性に「全然気にせず、ゆっくりされてください。」と、お茶を渡した。あ、仕事感出たかな。


「す゛みまぜん。」そう言って、彼は、お茶を飲んでからまた寝たようだった。




途中まで見ていた恋愛映画が終盤に差し掛かり、

アナウンスが聞こえた。

「今日は揺れることが予想されており、間もなく~」

今日は揺れるのか。時計に目をやる。


「…すみま゛せ゛ん。ちょっと立ってもいいですか?」隣の男性が、声をかけてきた。

反射的に「声、よくなりましたね。」そう言っていた。そう言えば咳もしてないし、顔色はちょっと悪いのが気になるけど。

イヤフォンを外して、通路に立つ。


「すみまぜん。ありがとうございます。」そう言って頭を少し下げてきた。

席を立った彼を見てびっくりした。背が高い。私も身長がある方だけど、180以上あるのかな。座ってたら分からなかったけど、背が高いのに、細くて心配になる。

そんなことを考えながら見ていると、いきなり男性がふらついた。「えっ!!」咄嗟に抱えたけど、体格さには敵わず。通路に倒れこんだ。























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