第350話 息吹戸といえば最近
「そうか! ありがとう我が友よ!」
ニコニコと幸せそうな顔でプレイする姿を視界に入れつつ、
「よっしゃああああ! 恋人確定いいいい! 攻略完了おおおおお!」
「ありがとう! ありがとう! これでコンプできる! ケンキさまに一生ついていく!」
「……よかったな」
「お前に頼んで良かったー。流石、ツンデレ心を分かってらっしゃる!」
「……別に分かってない」
さっきも適当に選んだだけだし、と心の中で付け加えた。
「んなわけないって。なんたって一生デレることがないツンツンと呼ばれている『暴君の女王様』こと
「暴君の女王様だって?」
「
「いやそんなに怒るなよ。みんなそう呼んでるんだから」
「……みんな」
「お前ってホント、
言葉にかぶせるように、コトン、と鳴った。
大きな音に反応して二人の視線が
続いてコンコンと音が鳴る。お猪口を床に当てわざと鳴らしているようだ。
「
「まぁ、そうだねぇ」
「
『アンデッド狂人』、『終末を招く者』という二つ名は、
「あの娘はアンデッドを触るのが苦手だっただろう?」
もちろん戦闘に一切問題はない。瞬く間に粉砕して死者の国に送り返している。問題は倒した後である。片づけが面倒だからと避ける傾向が強く、よっぽどのことがない限りアンデット討伐任務は請け負わなかった。
だがこの一か月ほど、それが逆転している。
急所だけ狙い粛々と倒すスタイルから、狂気に染まったように笑いつつ残忍に始末していくスタイルに変化した。
しかもアンデット討伐に自ら参加、嬉々として後片付けをするなど、今までの動きとは明らかに違っていた。
「私の記憶とは大いに違うが……
「
「だとしても、不思議だねぇ」
それを横目で見ながら
「でも記憶が一部欠落したんだろ? なかなか戻らないから
「おや、あの娘はまた記憶を失ったのかい?」
戦闘による傷、敵味方の術、自身の術の反動によって、
「戦闘に身を置く子に陥りやすい症状だが、治らないのは不安だねぇ。後遺症が残るようなら私が引き受けようかのぉ。玉谷よりかぁ私の方が細かいメンテできるぞ? 今度あやつと話してみるか」
記憶の損傷を繰り返すと脳が委縮する。その兆候かもしれないと、
「記憶喪失は本部一課だけの秘密って言っただろう? お前に話すんじゃなかった」
「俺だって本部一課所属で、口は堅い方だけどー?」
どの口が、と吐き捨てて
「まさか他の奴に話してないよな?」
「話してねーってば……なんだよその目、信じてないなら過去見てみろよ!」
何もやましいことはないと
「信じてやろう」
「やった」
誤解が解けて
「……!」
近づいてくる第三者の気配を感じ取った。
すぐに互いに目配せをして、玄関の向こう側から近づいてくる気配に集中する。
雪を踏む音が、森の奥からこちらに近づいてくるようだ。
鴨が葱を背負って来たと笑みを浮かべた。
三人は静かに立ち上がり、敵に気づかれないようこっそりと平屋を抜けだした。
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