第22話 岸田くんと彼女のゲーム

 高坂さんはゲームとかしますか?

 え? するんですか? 何か意外です。お家で妹さんと対戦するのですか。祐実さんが家庭用ゲーム機で対戦ゲームとか想像できないな。


 いいですね。一緒にゲームできる兄弟がいて。僕は一人っ子ですから。


 彼女は上手でしたよ。インターネット対戦で結構ランクが上の方にいましたよ。格ゲーでもFPSでもレースでも。ガチなゲームを得意としてましたね。

 彼女は最新のパソを使っていたので、前のパソを借りて二人でネットに潜ってました。前のパソも充分スペックは足りてましたから。


 そのうちゲームの話し以外もするようになりました。パソを立ち上げる時間とか、マッチング待ちとかに。

 ゲームの休憩時間や終わってからも話をするようになりました。


 彼女のする話しは、まあ、ロクでもなかったですね。

 彼女は友達がいませんでした。少なくともリアルでは。廃ゲーマーが職場のOLと何を話せるのでしょうか。


 ある時付き合いでつれていかれた店で、彼女は話を聞いてくれるひとを見つけました。ええ、話を聞くのを仕事にしている人ですね。

 ホスト遊びです。


 元々は職場の同僚と、興味本意でクラブに1回行っただけですよ。同僚は1回で満足したそうです。話の種ができたから。

 でも元々コミ障な彼女には刺激が強すぎたそうです。彼女だけがリピートするようになりました。

 ソシャゲに廃課金するよりは安いものだそうです。

 ホント、ダメな大人ですよね。


 幸いなことにホスト遊びは長く続きませんでした。まあ、彼女からしたら最悪なことに、だそうですが。

 彼女が入れ込んでいたホストが引退したのです。


 それほど稼げるホストではなかったみたいです。常連がコミ障の彼女ぐらいですから。彼女もそれほどお金を落としてなかったみたいですし。

 まあ、ホストに向いてなかったのでしょう。彼女もホスト遊びに向いていたとは思えませんが。


 さんざん課金したゲームの配信が終了したような喪失感だったそうです。あ、これ、彼女の言葉ですよ。ホント、ダメな人ですね。


 それから貢ぐ相手がいなくなって、働く意味が無くなったから仕事を辞めたそうです。ちょっと意味がわかりませんでした。


 そのあとは失業保険、アルバイトで過ごしていたそうです。僕と会ったときは、緩やかに貯金を食い潰しているときでした。


 そんな話を聞いてから、僕は彼女の好きだったホストの代わりをするようになりました。ただの遊びです。好きだったホストが引退して寂しがっている彼女に同情したのか。あるいはゲームで遊んでくれるお返しだったのか。


 ただのごっこ遊びです。もちろん本物のホストだって演技でしょうけど。彼女は僕をイケメンだと言って喜んでいました。

 小学生に何を言ってたんでしょうね。


 僕たちは、どうかしてたんです。




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