第23話 岸田くんと彼女の終焉

 僕と彼女はうまく行ってました。

 FPSゲームの連携もうまく行ってました。高ランク帯にいました。もう少しで最高ランクってところでした。まあ、彼女が上手かったので、僕はキャリーされてただけですけど。


 ゲームをして、その合間にホストごっこをして。半年は続きました。遅くまで一緒にいるようになりました。夏休みはほとんど彼女のアパートで過ごしましたね。


 僕たちは限界だったのです。

 誰かに認めてもらいたかったのです。それがホストとその客というロールプレイだったのです。

 少なくとも彼女は誰かに認められないと、自分を保てなかったのでしょう。彼女は僕に依存してました。

 そしてその事に優越感を感じていた僕も、やはり彼女に依存していたのでしょう。


 僕と彼女の関係は歪だったのでしょうか。


 だいたい彼女の話しは終わりました。


 こんな関係は長く続く筈がありません。周りがこんな異常な関係を認めるわけがありませんから。

 警察や学校や児童相談所とか、色々な人が来ました。


 通報されたんですね。


 それ以来僕は彼女に会っていません。当然会わせてもらえませんですから。

 僕はゲームをしていただけです。そのゲームは取り上げられました。


 彼女もゲームをしていただけです。彼女もゲームのパートナーを取り上げられました。依存する相手がいなくなってしまいました。

 代わりに得たものは、周りからの冷たい視線です。

 どうしてあんなことになったのか。あんなことをしたのか、僕にはわかりません。


 自殺しなければならないほどの罪なんか無かったのに!!


 ……。

 すみません、つい大きな声をだしてしまいました。


 えっと、僕の話しもしますね。大して面白い話しでもありませんけど。


 その後僕は学校に行かなくなりました。行きたくなかったわけではありません。親が外に出してくれなかったのです。噂になってしまいましたから。

 僕が頭のおかしな女に騙されて、ペットにされていたとか。不純な事をされていたとか。


 おかしいですね。ゲームをしていただけなんですけどね。


 それで親は引っ越すことにしました。僕は知らない町の、誰も僕の噂を知らない中学校に入ることになりました。


 そんな時に、彼女が僕のところに戻ってきたことに気づきました。

 彼女は今度はホストのロールプレイをはじめました。僕の体を使って、女の子を攻略し出したんです。


 そういえば彼女はギャルゲーも乙女ゲーも得意でしたから。


 彼女は死んでもゲーマーでしたね。


 僕ですか? 僕は別に困りませんでしたよ。彼女に振り回される女の子達を見ているのは楽しかったですから。


 彼女は生きづらかった世界に仕返しでもしていたのでしょうか? 下らない価値観で、ウソの噂で彼女を殺した世界なんてどうでもいいですから。僕の事を顔だけで評価する女なんて、どうでもいいですよ。


 でも、彼女は死んでからもこんな下らない世界にとらわれ続ける必要は無かった。

 だから感謝しています。


 高坂さん、彼女を救ってくれてありがとうございます。



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