第11話 戦闘開始
夕暮れの
妹の祐実が残念な子を見るような目で俺を見ていた。
何か変だったか?
祐実の向こうに、岸田くんが俺をにらんでいる。
祐実のメールの通りだった。
噂通り、岸田くんはイケメンで、そして憑かれていた。
いじめられていた亀を助けると、竜宮城に連れていかれる。
タイやヒラメの舞に、乙姫。
竜宮城は死者の世界のメタファーだ。
「誰? あなた」岸田くんの口を借りて乙姫が、俺を
女か。若いが、大人の女性。
「高坂洋介。拝み屋でも、払い主でも、お好きなように呼んで貰ってかまわない」
俺は話しかけながら、ゆっくりと岸田くんに近づく。
俺は布製のバックを肩からたすき掛けに掛けていた。
カバンの中に手を入れる。
「邪魔をしないで」
「そんなわけにはいかない」
「あなたには関わりの無いことでしょ」
「いや、まあ、そうなんだけどね」俺はちょっと困り顔になってしまう。
「戒めは破るものだろ?」
「何を言ってるの?」
俺はカバンの中を手探りで、使えそうなアイテムを探す。
「一応言っとくけど」まあ、通じないだろうけど、手順は大事。「供物捧げたら、とり憑くのやめてくれる?」
「断るわ」
「中学生に何の執着があるんだか。ショタなの?」
「ショタ言うな」
うん、正確にはショタコンだね。
「打ち払うよ?」
「やれるもんなら、やってみなさいよ」
では、遠慮無く。
俺は岸田くんに向かって駆け出す。カバンから取り出した紙の包みを開いて、彼に向かって投げつけた。
「塩?! 塩なげんな!」
お清めには塩だろ? あと米も混ぜた合わせ物だ。
「ふざけてんのか?!」
彼は駆け寄る俺に向かって手を伸ばす。
俺は手が俺の顔に当たる直前に、体ごと外側に傾けて避ける。直前で足を踏みしめて勢いを止める。止めた反動で右腕を彼の手にクロスさせて、彼の胸を打つ。
手にはお札をつかんでいた。
手のひらで彼の胸を打ったときに、お札を胸に張り付ける。
大丈夫、両面テープで剥がれない。使うときに両面テープを剥がしやすくする工夫がしてある。なかなか剥がれず苦労してから、いろいろ工夫してみた。剥がれやすくしすぎてカバンの中で剥がれて、カバンにくっついて出せなくなったこともあるけど。
「とっとと出ろよ、ショタ」俺は右手を胸から顔に上げる。彼の顔をつかむ。
実際につかんだのは、岸田くんに取り憑いていた悪霊。
あたかも実体化したかのような悪霊を、彼の体から引っ張り出した。
接触したことで、悪霊の意識が俺の脳内に流れ込む。これキライ。
さっさと終わらせようと、俺は左手でカバンの中から短刀を取り出す。あらかじめ鯉口を切ってあるので、棹はカバンの中に残す。
短刀を抜いたところで、悲鳴が聞こえた。
「いやー! 岸田くん!」
え? 何?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます