第8話 類は友を呼ぶのか?

「お前ら、なにやってるんだ」

 祐実は威圧を込めてそう言った。


 みんなが祐実を見る。

「先輩には関係ないですよね」リーダーらしい女子が、祐実の圧に負けじと言い返した。

 祐実が、教室で岸田を呼び出した上級生だと気づいている。

「そっちの女は知ってるやつだ」祐実は、囲まれていた睦瑞希を指差す。

 瑞希はすがるような目で見てくる。


 名前、なんだっけ? 祐実は瑞希の名前を覚えていなかった。


「話してるだけです」

「ふーん、お前、名前は?」名前を訊くだけでも威圧になる。自覚して訊いた。別に名前には興味はない。


 彼女は一瞬ためらってから、意を決したようににらみつけてくる。「吉川結衣」そう名乗った。


 祐実は意外と根性あるな、と感心して、「高坂祐実だ」と名乗った。


「私も暇じゃない。この後、人に会う約束がある」祐実は言う。岸田と会う事になっている。結衣には岸田と会う約束だとわかるはずだ。約束したときに、見ていたから。

「岸田くんに何の用ですか?」結衣の言葉は気丈だが、不安も混じっていた。

「プライベートな用だ。言う必要はない」

 結衣の表情に占める不安の割合が増える。


「そいつ借りるから」祐実は瑞希を指差す。そして瑞希に「来い」と言った。


 瑞希がオドオドしながら、囲みを避けて祐実のところに来た。

「じゃあな」祐実は瑞希を従えてその場を後にした。



「ありがとうございました」結衣たちから見えなくなってから、瑞希は祐実に言った。

「面倒に巻き込むな」祐実はそう言ったが、実際は自分で面倒に首を突っ込んだだけだ。これでは兄の洋介の事を言えない。


「妹さんは、岸田くんに何の用があるのですか?」

 瑞希は祐実の名前を覚えていないようだ。祐実も同じだが。

「妹さん、はやめろ」

 瑞希は少し考えてから、「高坂さんは、岸田くんに何の用があるのですか?」と訊きなおした。下の名前は覚えていないようだ。兄の高坂洋介の名前は覚えているのか。


「お前、岸田の何なの?」

 瑞希は困った顔をする。クラスメイト以外に関わりはない。

「関係ないなら、ほっとけ」


「岸田くんは、危険です。良くないものに憑かれてます」

「そういうの」祐実は呆れたように、瑞希を見る。「やめろ」

「嘘じゃないです!」

「そんな事言ってるから、いじめられるんだろ! バカか! ちょっとは学習しろ!」祐実は苛立ちをのせて言った。


 瑞希は怯えて身をすくめる。それでも彼女は言葉を続けた。


「見捨てられません」


 こいつも洋介と同じ人種か。祐実はため息をついた。



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