第7話 妹さん
「妹さん!」
高坂祐実が2年の教室から立ち去ると、後から追いかけてきた
妹さんと呼ばれた事にムッとする。
祐実を妹さんと呼ぶってことは、自分が祐実の兄の高坂洋介と友達と思っているってことだろう。
お前、洋介の友達じゃないだろ!
と思ったが、口に出さずにいた。
瑞希は祐実の不機嫌なオーラに怯えながらも、
「昨日はごめんなさい。私、睦瑞希っていいます」と言った。
昨日ろくに挨拶もしなかったことを詫びているのか。
意外とちゃんとしているな、と思った。
「かまわない。私は高坂祐実」
「私は、……」瑞希は祐実がちゃんと名を名乗ってくれたことで安心したのか、話を続けようとする。
「兄貴に近づくな」祐実は威圧感が出るように、意識してそう言った。「兄貴」という単語を選んだのもそのためだ。もっとも、洋介がいないところでは普段は「兄貴」という単語を使っている。「兄さん」では、甘えた感じが相手に伝わってしまうような気がするから。
キツイ言葉に、瑞希は萎縮してしまう。
「兄貴は優しいからな。気まぐれで人助けをして、勘違いされることも、たまにある」祐実は忌々しそうに言う。
「勘違いだ」断言した。
瑞希は言葉を出せない。
「それとも、お人好しをいいように使ってやろうって腹か?」
「そんな事はしません!」これは即答。
「ならいい。昨日の礼は不要だ。兄貴に近づくな。嘘つき女にまとわりつかれると、兄貴の評判が落ちる」
「嘘なんてついてません」
「転生した。とか、幽霊が見えるだとか言っていれば、嘘つき呼ばわりされるのは当たり前だろ。バカかお前」
まだ何か言いたそうな瑞希に背を向ける。
祐実は、兄の洋介にメールを入れた。
「噂通りのイケメンだったよ。放課後会うことにしたから」時間と場所も書いた。
しばらくしてから、「わかった」と、簡潔な返事が来た。
放課後時間が余った。岸田との待ち合わせはまだ先だ。
友人は部活に行ってしまった。今日は部活はサボる。必須課外活動日ではないからかまわないだろう。やることがあるから。
祐実は時間潰しに何となく校舎を散策する。
部活の音がそこらからする。グラウンドの運動部を眺める。
人気のないところを求めて、非常階段に何となく向かうと、人気を避ける先客がいた。
よりによって睦瑞希だった。
数人の男女に囲まれている。
岸田に会いに行ったとき教室にいた、岸田の取り巻きか。岸田はいない。
囲んでいるグループのリーダーは、教室で祐実をにらんでいたやつか。
いじめられている亀は助けてはいけない。玉手箱を押し付けられるから。
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