第6話 岸田くんはイケメンなのか?
高坂祐実は2年生の教室を訪れていた。
兄の高坂洋介が、イケメンの岸田に興味を持ったからだ。
高坂兄妹の仲は良好である。
妹が兄に乱暴な口のきき方をするのは、普段の口調がそうであるからだけの事。
兄が甘やかすため、増長しているせいでもある。
昨日、公園で洋介と睦瑞希が二人でベンチに座っているのを見つけたときは、不機嫌になった。
いつもは不機嫌に聞こえるような口調なのが、事実不機嫌な口調になった。
あの女が洋介にべたべたしているのを見て、ムカついたからだ。
いつもは「兄さん」呼びなのが、「バカ兄貴」呼びを使ってしまった。
余談だか、心の中では「洋介」呼びなのは、一応内緒である。
目当てのイケメンを探すのは簡単だった。睦瑞希と同じクラスという情報があったから。
睦瑞希は悪目立ちがすぎて、すぐにクラスがわかった。
嘘つき瑞希は有名人だった。
祐実は教室に入らず、入り口で手近な女子に声をかけた。
声をかけられて女子は怯えたような表情を見せる。
先輩に声をかけられたというだけでなく、祐実の見た目に威圧感があるからだ。
祐実は見た目もしゃべり方もキツイ事を自覚していたが、直す気はなかった。なめられたら終わりだ。経験がそう教えてくれた。
その女子は岸田を呼んだ。
岸田はグループでつるんでいた。そのグループが、昨日、瑞希を吊るしあげていたグループであることは、祐実には知らない事だ。
彼は一瞬不審な顔をしたが、すぐに平然とした表情に戻した。彼は知らない女子生徒に呼びだされる事になれていた。それが先輩であったとしても。
そしてその先輩が美人であれば、何も不満はない。きつめの印象があるが、クールな美人も悪くはない。
祐実の威圧感の半分は、近寄りがたい美少女なのが原因であった。
「あんたが岸田?」
「はい。先輩は?」彼は祐実の威圧感に当てられながらも、落ち着いて返事する。女子になれた男子中学生、なんかヤダ。
「高坂祐実」名前を名乗る。
「高坂先輩は、何の用ですか?」
「岸田がイケメンだと聞いたから、見に来た」
彼は少し驚いた顔をしてから、平然と、
「ガッカリしましたか?」と訊いた。
「いや、噂通りだとわかった」
彼は面白そうに笑う。美人のお姉さんに、イケメンと言われて悪い気になるはずはない。
「それは良かった」
「岸田、放課後あいているか? 付き合え」
「いいですよ」
放課後遅めの時間、学校から離れた公園を指定する。
「学校の奴らが多い時間はちょっとな」と祐実が説明すると、
「そうですね」とわかったような返事をした。
これ、ホントに中学生か? 末恐ろしいな。と、祐実は自分の事を棚にあげて感心してしまった。
岸田と一緒にいたグループが、こっちを見ている。一人女子が厳しい表情でにらんでいる。
その程度で、私と張り合えるとでも? 祐実は特に気にしなかった。
教室を見渡すと、
あいつ、友達いたんだ。少し驚いた。
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