第5話 男か女か?
「私が何度も転生を繰り返したのは、今日、ここでご主人様に会うためなのです」
引き込まれるような、
マジでこわいわ。
妹の祐実もあまりの寒さに、体を抱いて震えていた。
「転生なんてオカルトあるわけないだろ」俺はうんざりして、投げやりに言葉をかけた。
瑞希は俺の言葉に、傷ついたような表情。
いや、ホントの事だろ。
「お前ひくわ。もうしゃべんな」祐実が怒りと呆れの混ざった言葉を吐く。「気持ち悪。お前そんなんじゃ友達いないだろ」
「いるもん!」
同じくらい痛い友達が?
「んん? お前もしかして、うちの中学の2年か?」祐実は何かに思い当たったように言った。
瑞希はビクッとする。
「知ってるのか? 祐実」
「有名人じゃね? 幽霊が見えるって言ってる嘘つき女」
「嘘じゃない!」瑞希は怒気をのせて叫んだ。
うっわ、引くわ。
「お前バカだろ」と祐実。
俺もそう思う。
「中学にもなって、何言ってるんだ。ガキか」
祐実の冷たい目で見下され、瑞希はうつ向いて黙ってしまった。
「もう帰れ。で、幽霊が見えるなんて、痛いこと人に言うのやめろ」
こうして、俺の頼りになる美少女の妹は、自称転生した元従者を追い払った。
俺と祐実は、打ちひしがれて、トボトボと帰る瑞希の後ろ姿を見送る。
「祐実」
「何? バカ兄貴?」
ヒドイな。いつもは兄さん呼びだろ?
「あいつ、男? 女?」
「そこかよ! 女だろ、どう見ても!」
俺たちは夕暮れの住宅街を二人並んで歩いていた。
家まではそう遠くない。
「さっきの子、睦瑞希、て名前らしい。知ってた?」俺は歩きながら、祐実に話しかける。
「噂しか知らない。2年生なんか知るわけないだろ」
「じゃあ、岸田くんも知らないか」
「誰だよ、それ」
「多分、さっきの子と同じクラス。イケメンらしい」
「いや、だから知らないって」
「岸田くんが幽霊に取り憑かれてるって言ったらしい」
「何でそんな事言うかな? かまってちゃんなの?」
「それで岸田くんを好きな女の子たちに、吊し上げられていた」
「バカなんだな」祐実は苦々しげに、そう吐き捨てた。
「興味ない? イケメン」
「はあ?」祐実が呆れたように俺を見る。「バカなの? 兄さん」
よかった。兄さん呼びに戻った。
「あ、
家の近くで見知った顔を見つけた。
俺たちの幼馴染みの、
クラスで人気のスポーツ少女だった。
こっちは俺基準の評価じゃなくて、クラスの評価な。
瑠璃は俺たちに気づくと、たおやかな微笑みを返した。
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