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 私にこの道を選ばせたのは、高校時代の友人、リナだった。今から五年前、彼女は「ホワイトリリー」というユーザー名で SNS を通じて国際社会を動かし、たった一人で我が国を危機から救った英雄となった。今やSNSは情報戦の戦場の一つとなっており、そこで繰り広げられる戦いはライクウォー……「いいね!」戦争とも呼ばれるが、彼女の行動はその先駆的なものだったと言える。


 しかし、その後彼女は行方不明になった。警察の捜査の結果、隣の国から潜入していた工作員たちに彼女は誘拐され、報復のため殺害された、という説が有力とされた。


 ショックだった。だって、私もリナと同じようにSNSに写真をアップロードし、市民の被害を訴えていたのだ。立場は彼女と何も変わらない。違いはただ単に言い出しっぺかそうじゃなかったかだけだ。私もいつ工作員に捕まってもおかしくない。

 恐ろしい、と思った、だが、同時に私は激しい怒りを覚えた。彼女はただ世界に向けて助けを求めただけなのに……どうしてそんな目に遭わなくてはならないのか。


 もう絶対にこんなことを起こしてはならない。そう心に決めた私は、情報戦のスペシャリストとなるべく国内最難関の大学の電子情報学科に入学、三年次に飛び級で大学院に進学し、一年で修士号を取って修了。そのまま私は軍司令部に入り、大尉相当の階級を得て今の部局を立ち上げた。リナのユーザー名「ホワイトリリー」を私自身のコードネームとして受け継いで。そう。伝説の英雄「ホワイトリリー」は生きている。今は私が二代目「ホワイトリリー」なのだ。


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