第42話 心にゴミが混じって
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「数が多すぎ……天汰、攻撃に気を付けて!」
「分かってます──」
「うふふ」
嫌な笑い声だ。悪戯な天使が僕に背後から囁く。
避けようとしたときにはヘラルも僕も反応出来ずに爆撃を食らった。
「……腕が千切れた……ァッ……!!」
「天汰……ッ! ウチが治して……あげるから」
吹き飛ばされた左腕が痛み始める。しかし、僕の身体は特殊だからすぐに切断された付け根から既に再生を始めていた。
「大丈夫です……! 治るんで! そっちこそ手を止めないで!」
「……分かった」
「──助けてくれェ! まだ死にたくねえ!」
叫び声の方に3体の天使達が声の主を冷笑的に囲んでいる。
突然起こった襲撃だ、まだこんなにも逃げ遅れた人々が街に残っている。
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3体を黒薔薇で縛り、僕の火炎鞭で一掃する。天使を倒しても倒した証拠である数値が分からない為、あんまり爽快感が無い。
「早く隠れて! おっさん!」
「ああ……ありがとう……!」
一人の男を助けたぐらいじゃどうにもならないか。
絶えず天使は降り注いでくる。夜空と共に見えるのはその親玉の女神だ。
「やっぱ攻撃届かないかな……」
「試すしかないね。今回は足をワタシと契約しよう」
「ああ」
二度目の代償の引き換えは、両足か。腕で涙が出るほど痛かったのに足となったらどれだけ負担がかかるのか。
ヘラルが足に触ると一瞬で両足が消え、僕は体制を維持できずにその場に倒れた。
そして、すぐさま新たな悪魔の足が生え、地面を踏みしめ立ち上がる。
足の感覚が無い。やっぱり不気味な感覚だ。
「行くぞヘラル!」
「そっちこそ構えて!」
一度腰を落とし足に力を込め飛び上がる。悪魔に強化された足は、そこから何十メートルも飛び女神との距離を詰めていく。
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炎の魔力に包まれた剣を握って僕でさえ反応しきれない速度で女神にぶつかり、僕は渾身の一撃を女神に当てた。
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「いや、効いてない!?」
僕の身体は重力に導かれて徐々に高度が下がっていく。
まずいな、一撃で倒すつもりだったんだけど……それ以上にどうやって着地しようか。
頭から落ちている状態からどうやって足から着地出来るか考えてみようかな。
「【火】」
女神が小さく口を開けてそう言った。
女神は両手を重ね合わせ、僕達に手の平を向ける。僕をそっくり真似したように大きな魔力が溢れ出した。
「……天汰避けちゃ駄目だ。避けたら皆殺される」
「ヘラルの魔力を貰うことって出来るか!?」
「無理」
「……【火炎球】ウッ──!」
全魔力を注いで火炎球を放った。体感だと今までで一番大量の魔力を消費している。
「ぐッ……」
女神が出したとても小さな火の玉。僕が初めて出した火炎球よりも小さかった。なのに、僕の火炎球とぶつかり合うと、変化が特に起こる訳でもなくそれを貫いた。
「魔力が……桁違い過ぎ──」
「ぐわああああああああ……!」
火炎球をすり抜けた奴の火の玉は、次に僕の胸を焼いた。
だが、ヘラルは咄嗟に逃げて、この攻撃を受けずに済んだみたいだ。
契約も解除されて足が再生しようと抗っている。
「ダメージだったら
めちゃくちゃ痛えや。もうどこを失ったとか、どこを貫かれたとか関係なくなりつつあるのかもしれないな。
「うっ!」
地面に意識が向かず、そのまま頭から墜落し思考がぼんやり濁った。
「うふふ」
「あはは」
周囲から天使の笑い声が聞こえてくる。その声は僕の身体に触れては爆発して粉々に破壊していく。
全身が痛い、だけどまだ意識は残っている。僕は段々と苛立ってきた。
「……自爆なんかしちゃってさあ! 楽しいのかよ!?」
「【エンドレスラッシュ】! 天汰、立てる?」
助かった、僕は魔力切れで動けなかったから虚勢を張っていたが、ケイさんが居なかったら普通に嵌められ続けていたな。
「ありがとうございます! そっち……も! 【レギナエ】」
「うふふ」
「ッ助かったよ。これで貸しは無しね」
またやり直しかよ……あの女神の体力もどれくらいなのか分からないし、いつ終わるんだよ!
「【
彼女がそう何処かで唱えると、空に巨大な氷塊が浮かび上がり、女神の胴体を鋭く射抜いた。
「……間に合った」
「ユメちゃん! よっしゃウチも頑張るよ〜!」
「え、ユメちゃん……
二人と合流出来たことよりも僕はユメちゃんがこんなに強かったことに驚いていた。
いや、15億って……そんなに強いなら言ってよぉ!
「おう天汰、ケイ……」
あれ……? なんか、カエデさんの様子が変だ。
なんか、焦ってる?
「数が減ってきてる! 天汰、ワタシを見て!」
「分かった! 僕も手助けする! 【火炎球】! ……はぁはぁ」
「無理しないでいいからぁ! 魔力溜め直して!」
ヘラルに言われた通りにするしかない。僕はしゃがみ込んで呼吸を整える。
「……天汰はわえとカエデで……守る」
「……ああ」
「ありがとうございます……」
「……魔力を、言われた通り……溜めなおしてね」
「……分かってますよ」
僕の周りにはカエデさん、ユメちゃんが囲むように構え、ケイさんとヘラルが街中を駆け天使達を切り刻んでいった。
外で逃げ惑う一般人も何とか全員が家に避難出来たようだ。
後外に残ったのは僕達以外の数名のプレイヤー達だけだ。
「戦え!」
「フェンリルの強さを見せてやる!」
「フェンリルって……」
「……天汰君、フェンリルは……いっぱいの人がリーダーの二人を好きらしい……よ」
シェンとニーダを好き? 外見だけが好きという理由だけで、ここにいる何百人も仲間がいるのか……世の中はよくわからないな。
「……すまない。俺の戦い方じゃ天使と相性が悪くてよ……守ることしか出来ない!」
「気にしなくても……そういえば、フェンリルの人は沢山いるのに、ニーダとシェンは見えないですね」
「…………うん」
なんか、変な間があった。さっきからこの二人の様子が変だぞ。
ここに来るまでに何かあったのか。
「……天汰君、好き……だよ」
「え、ありがとうございます……」
やっぱりこの二人はおかしい! 信用出来ない!
この二人は味方じゃない。何か様子を見ているのか!?
「天汰、ごめんな」
カエデさんの声が態とらしくポツリとこの場に零れ落ちた。
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