第25話 全身全霊
「 『天汰! 魔力の管理は──』」
「分かってる!」
ヘラルは僕を操りアマテラスに一撃を食らわし、後ろに下がって反撃を回避した。
「何故……なぜ戦おうとする!?」
「『世界があなたを望んでないから、ワタシ達があなたを否定してあげる』」
「主語を拡大しただけだろう……?」
一発目はたったの200万、シュウの強化魔法が切れてしまってあんまり火力は出ないか……。
「ヘラル、アマテラスのステータスはどうなってる? 強化が入ったって言ったよな!」
「『えーと……体力がほぼ
「1億ゥッ!?
どうする……連撃スキルじゃ100万ずつしか上がらないから、僕は90回以上攻撃を続けないといけない。
ヘラルが疲れちゃうな。
……そうか! ヘラルに身体を操られていても魔力だけは使える。それを試してみよう!
あれやこれと考える間にもヘラルは攻撃の手を止めない。
何発も攻撃を当てては光を避け、じわじわと連撃でダメージを与えていく。
「『
「くっ……雑魚どもが……!」
「うおおおおおおお」
リチアも満身創痍の状態で特攻し、僕を操っているヘラルと同時に攻撃を仕掛ける。
「ヘラル、魔法を使うぞ! 【
体内の魔力を一気に放出し、ダイアさんの剣に纏わせる。ヘラルの能力で黒く染められた銃剣は朱い烈火に包まれた。
「『ないす天汰!』」
「いけええええ!」
「天日・【オーガスタ】ァッ!」
二人の連携攻撃が女神の表情を崩していく。
ヘラルの攻撃が僕の魔法と合わさって一気に2000万ダメージまで上昇し、リチアの技も1810万ダメージを叩き出した。
「ヘラルもやってくれ!」
「『でもワタシ──』」
「大丈夫だ! 僕がいる!」
この言葉の意味をヘラルなら受け取ってくれるはずだ。
僕はそれを信じて自分の身体に集中する。
「仕方ない……消し炭に──」
「【
超至近距離で女神に向けてヘラルは黒百合を放ち、陽光をかき消した。
ヘラルは僕を操るのを止め、服の中から出てきたのだ。
身体が自由になり僕は両手で剣を力強く握り、アマテラスに叩き付ける。
「小賢しい……!!」
「
よし、この攻撃も連撃に適用された! 連撃スキルは武器の所有者に付与されるとヘラルも言っていた。
「オラァッ! ヘラル、戻ってこい!」
「うん!」
アマテラスに追撃を食らわせこれで3400万。光を食べきったヘラルはすぐにまた僕の胸に飛び込み全身の操作を再開する。
「『コンビネーションアタックだあああああ!』」
「魔力の出力を上げるぞ! ヘラルは攻撃をもっとだ! 最悪僕が耐える!」
「はあはあっ、貴様達ならやれるぞっ! ……ッはあ」
リチアも限界が近い。早くこの戦いに終止符を打たねばならないな。
「ヘラル! アレをやるぞ! 今の状態ならもしかしたら倒せる!」
「『どれだ!』」
「飛ぶんだ! 僕がトドメを刺す!」
「『──!? そういうこと……ねっ!』」
ヘラルは僕の身体を無理矢理使って宙を舞い、僕は女神の直上に位置した。
「そんなのくらうものか!」
「──【
「ッ、何故我を縛ることが出来る!?」
「言ってくれたじゃないか。あなたとワタシ、そして天汰はしっかり存在してるって」
「光を掴めるだと!?」
「あなたは光じゃない。生きてるの」
最高だ! 全身の身動きが取れなくなった女神相手ならたとえ僕自身が
僕は剣を右手でより強く握り締めた。
「それさえ無ければ!」
「……っ貴様マズイぞッ──」
眩い光とともに右手から金属に何かがぶつかったような衝突音が鳴り響き、唐突に重量が軽くなる。
「フフフ……我の魔力を全て使って壊させてもらった……! それが無ければ汝らは我に敵うことはあり得ない!!」
「……ちっ──」
ダイアさんの形見を破壊された……しかも僕自身の魔力をこの武器にほとんど消費していたため、僕の魔力は枯れてしまった。
だが、ヘラルが特別に高く飛び上がったお陰で考える時間だけはある……!
「──貴様! これでもくらえええッ!! 【
え、リチアはどうした!? いや……そういうことなのか!?
リチアは右足左足を交互に一歩踏み込み、左足を軸に時計回りに一回転し斬撃を飛ばす……代わりにリチアが持っている剣を僕めがけて飛ばした。
「届けえええッッ!」
常人なら届くはずのない距離があるが、リチアがそもそも常人ではないこと、シュウが一回目に唱えた強化魔法を、たった一人だけ気絶していて始動がズレていた奇跡がこれを可能にした。
「ぐうううぅぅう!」
リチアの投げた剣の刃先を何とか掴めた。
指がぐちゃぐちゃになったがすぐに再生するので問題はない。
遅れて衝撃が直撃したが、痛みは何とか耐えた。
リチアの一撃は最小限に抑えられていて意識を失うことは無かった。
今度こそしっかりと両手でグリップを握り、あの構えを取る。
ヘラルが僕の身体を動かしたときの感覚を探りながら、記憶を辿って僕の全身を操る。
何かが見えた気がした。
「天日・【
引力に任せて落ちてゆく。目指すはアマテラスだ。
動けず避けることが出来ない彼女は最後まで悲しそうな目で僕を見ていた。
はっきり言ってここからは賭けだ。起きるか、起こらないか。
「終わりだ」
ただ僕は信じてる。具体的に何をと聞かれたら答えにくいが。
……きっとこの光景を見た人から僕はまるで雷鳴を纏っているように見えているだろう。これは天から落ちた雷鳴だ……と。
剣先にアマテラスが触れる感覚を感じる。その時初めて彼女そのものに触れた気がした。
「────」
そして僕はそれを断ち切った。
「……く」
「クリティカル……!」
金色の数字は
2つの数字の羅列が重なり合い、1つの数値へと転生する。
「
女神は逝去した。僕達の勝利で、女神の敗北なんだ。
だけどまず最初に浮かんだのはこれだ。
カンスト……してないじゃないか……。
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