四章 第九話

如月たちは刀を夜月に向ける。


「導き手四人が相手か。傷を負っていて満身創痍とはいえ、侮れない。妖術 雷霆万鈞」


夜月はいきなり縦横無尽の雷撃を放つ。

雷が四人を襲った。

如月、京極、桔梗は防げたが、東雲は防げなかった。

東雲から血が垂れる。


「無理するな」


如月が言う。


「大丈夫です。私だって導き手です。最期まで戦いますよ」


東雲から覚悟を感じた。


「それは僕だって同じだよ。全力であいつを倒す」


京極も言う。

桔梗もうなずいていた。


四人の気持ちは一致していた。

「必ず夜月を倒す」


夜月は、雷撃を放って接近させないようにしていた。

無数に雷撃をかいくぐり、夜月に接近しようとするが、なかなか抜けることができない。

このままでは、一方的に攻撃されるだけだ。


「如月君、援護をお願いできるかい」


京極が言った。

如月は一瞬で理解すると、「ああ」と言って返事をした。


「舞刀術 地割れ」

「舞刀術 鬼事」


京極が一直線に夜月へと駆け出し、如月が飛んでくる雷撃を斬りつけることで京極に当たらないようにした。

それでも、飛んでくる雷撃の数が多く、如月一人ではさばききれない。


「舞刀術 川下り」


東雲が加わり、京極への攻撃を減らす。

京極が夜月に刀を振るう。


「妖術 雷霆万鈞」


縦横無尽の雷撃が如月たちを貫いた。

夜月に接近していた如月たちを吹き飛ばす。


「もう一人がいない、、、?」


そこで、夜月が一人いないことに気が付く。

いや、いないのではなく、夜月の視界に入らなかったのだ。


「舞刀術 朧月」


桔梗は、本来は回避に使う技を連続して使うこと見よって、夜月の視界から消えていた。

夜月に忍び寄り、刀を振るう。


「見事な隠蔽術だ」


しかし、防がれてしまう。


「舞刀術 満月」


桔梗は無数の斬撃を繰り出すが、それもすべてさばかれてしまった。

桔梗は斬られるが、それでもくらいついていった。


「よくやった、桔梗」


吹き飛ばされた如月が戻ってくる。


「舞刀術 花札・五光」


五撃の斬撃を放つ。

それも防ぐ夜月。

背後から、京極と東雲が斬りかかった。


「くっ」


夜月に焦りが見え始めた。

例え四人が相手だとしても、すでに全員が満身創痍。

夜月が有利なはずだ。

それなのに、如月たちはなおも立ち上がり、夜月に向かっていく。

夜月は、いまだに誰も殺せてはいない。

それが夜月を焦らせていた。


如月たちは確実に、夜月を追い詰めていた。


「妖術 紫雷しらい


夜月は全方位に雷撃を放った。

放射線状にだ。

ただ、雷の色が違った。

青白い稲妻ではなく、紫の稲妻だった。

速さも、今までより速くなっていた。


そんな雷撃が四人を襲った。

吹き飛ばされる如月たち。



如月は崩れた家屋に当たり、止まった。

出血がひどいが、骨は折れていないようだ。

如月は立ち上がった。


「なんだ、まだ生きているのか」


如月の目の前に夜月の刀が迫る。


「くっ」


後ろへ跳ぶことで躱した。


「しぶとい奴だな。ほかの三人は死んだだろう。起き上がっていない」


ゆっくりと如月に近づいていく夜月。


「お前ひとりが生き残ったところで、無駄なんだよ」

「黙れ」


如月は夜月に斬りかかっていく。


キンキンキンキン!!!!


「うおおおおお」


如月が吼える。

夜月に斬られるが、それでも如月は止まらなかった。

刀と刀がぶつかり合う。



ドン!!!!


「なに、、、」


京極が夜月を瓦礫に突き刺し、固定した。

京極は血まみれで瓦礫が足に刺さっている。


「京極、、、」

「どけ!!!」


夜月は京極に向かって刀を振るった。

だが、、


両腕を桔梗と東雲に斬られる。

二人ともやはり血まみれであった。


「首を斬れ、如月!!」


京極が叫ぶ。


「舞刀術 百人一首」


如月は、力を込めて刀を振るった。


「「うおおおお!!!!」」


如月と夜月が声を上げる。



そしてついに、、、

如月は、夜月の首を斬った。

夜月の首が宙を舞う。


(これで、、、終わりだ)


如月がそう思ったのも束の間、夜月は最期に全方位へ雷撃を放った。

威力は落ちているものの、如月たちは吹き飛ばされる。




「はっ」


如月は一瞬意識を失っていた。


(ほかの人は無事だろうか?)


周りを見渡すと、他の三人は近くに倒れていた。


「大丈夫か」


如月が声をかける。


「う、、、、、ん」


起き上がったのは、桔梗だった。

この四人の中では、比較的傷は少ない。


「桔梗、よかった。東雲、京極」


二人に声をかける。

東雲のほうを見た桔梗は、涙を流しながら首を横に振った。


「そう、、、か」


如月の目に涙が浮かぶ。

京極は、うっすらと目を開けた。


「京極」


それに気が付いた如月が、京極に駆け寄る。


「ごめん、如月君。僕はもう、、、長くないみたいだ」


如月は唇をかみしめ、涙を流す。

その涙が、京極の頬を濡らす。


「泣いているのかい」

「当り前だろ。仲間が死んでしまうのだから」

「如月君、君はこれからも前を向いて歩んでいってほしい。それから、僕は君と導き手をやれて、君たちと導き手をやれてよかった。ありがとう」


京極はそう言うと、目を閉じ、息を引き取った。

如月の目から、涙が止まることなくあふれてくる。


如月の視界がぼんやりしてくる。


(足に力が、、、入らない)


そのまま倒れてしまう。

如月も相当出血しており、限界が来てしまったのだ。


「如月さん、如月さん」


桔梗の声に返事をすることができない。

如月は再び意識を失った。








如月は、橘たち伝手の懸命な治療のおかげで、何とか命は引き留めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る