第四章 無限の刀

四章 第一話

冷泉が命を落としてから二か月。

如月は冷泉の墓参りに来ていた。



二紋様である刹那を冷泉と京極が倒した。

しかし、冷泉は命を落とした。


このことは、導き手たちを大いに動揺させた。

炎楽だけでなく、冷泉も殺されてしまった。

任務は基本一人だが、仲間意識は強かった。


また、冷泉と如月は同い年だ。

炎楽も冷泉も死んでしまった。

如月の同期がいなくなっていく。

如月はそれに悲しさを感じていた。



如月が手を合わせていると、そこへ京極がやってきた。


「如月君、来てたんだね」

「京極、、、」


京極は如月の横にかがみ、手を合わせる。


「冷泉君が死んで二か月か。僕は、、、冷泉君を守れなかった。もっと早く駆けつけていたら、もっとうまく立ち回っていたら、そう考えてしまう。後悔してもしきれない。そうしたところで、冷泉君は戻ってこないのにね」


京極が言う。


「死んだ人間は戻らない。だから、生きてる俺らができることは、彼らの思いを未来へつなぐことだと、俺は思う」


如月は顔を上げる。


「俺だって、いまだに炎楽のことを後悔している。納得できてない。それでも、顔を上げて、前向いて生きていかなきゃいけない。いつまでも後ろを見ているわけにはいかないんだ」


風が吹き、紅葉が落ちてくる。


「如月君も、そう思っていたんだね。意外だよ」

「俺としては、京極でもそう思うと安心した」

「どういうことだい?」

「京極は強いから、あまり思い悩まないと思っていた」


ふう、と息を吐く京極。


「僕だって思い悩むさ。僕が守れなかった命がたくさんある。導き手を長くやっているとね、『死』というのを多く見るんだ。『死』は悲しいものだよ」


そう言う京極は、寂しげな眼をしていた。


「僕は、誰かが悲しむのを見たくないんだ。もう、誰にも死んでほしくない」

「俺もそう思う」


その後、しばらく沈黙が続く。

沈黙を破ったのは、京極だった。


「如月君とこうして話すのは、久しぶりだね」

「そうだな。最近は二紋様だなんだと大変だった」

「それに、如月君はなんか、話しかけにくい雰囲気があった」

「炎楽にも言われたことがあるな、、、」

「あははは」


その後は、炎楽や冷泉との思い出を語り合った。

如月にとって、久しぶりに楽しいと思えた瞬間だった。



そして時間は過ぎていき、季節は冬。

雪が積もっていた。

如月は、東雲家を訪れていた。

昼間は打ち合いをしており、夕飯までごちそうになってしまった。

辺りはもう暗くなっている。

そこで、東雲と話をする。


「なかなかあと一体の二紋様は現れませんね」

「ああ、目撃情報も全くない」

「あと一体と思えば思うほど、焦ってしまいますね」

「その気持ちはわかるが、焦ってもいいことはない。俺らは、いつも後手後手になってしまうのだからな」

「付喪神は神出鬼没ですから。いつ、どこに現れるかなんて予測もできませんよ」

「ま、備えておくに越したことはない」

「そうですね」


その後は、雑談をする。

そして、二人が笑っている時だった。


「ここが東雲家か」


一体の付喪神が東雲家に入ってきたのは。

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