幕間 第二話☆

*刹那視点です




刹那が生まれたのは八百年ほど前。


刹那はもともと、父子家庭の一人娘の持つ簪だった。

娘の名を、雪那ゆきなといった。

雪那の父親は、雪花の簪を作って雪那に渡した。

雪那はそれを大切にしていた。


雪那が結婚して夫の家に嫁ぐときも、その簪を持って行った。

結婚してから、雪那の生活は変わってしまった。


雪那はなんでも器用にこなすことができた。

夫はそれが気に入らなかったのだろう。

毎日のように雪那を殴っていた。

それでも、雪那は耐えていた。



ある日、雪那は夫に殴られた後、家の外に放り出されてしまった。

雪の降っている寒い夜だ。

息も白くなる。

そんな夜に外出している人は誰もいなくて、雪那に手を差し伸べてくれる人はいなかった。

雪那は、凍死してしまった。



そして、刹那が誕生した。

雪那を守りたいと考えていた刹那は、生まれたときから紋様があった。

また、守りたいと考えていたために、自身の名前を『刹那』とした。

これは、雪那を忘れないために、そして、雪那を殺した人間をすぐに殺すという意味を込めてだった。


刹那は雪の降っている中で生まれたため、氷を扱うことができた。

そして、雪那が大切にしてくれた簪を武器にしたくなかったため、氷で銃を作って戦った。



真っ先に雪那の夫を殺すと、その後も人間を襲っていた。

ただ、女性は決して襲わなかった。


そうしていると、付狩りに目を付けられ、導き手と戦うことが増えた。

導き手との戦いの中で、銃だけでなく剣を使って戦うことも増え、刹那の剣術が磨かれていった。



そしてとある真夏の夜。

刹那は導き手である冷泉奏介と戦っていた。


冷泉もそこそこ強かったが、刹那には及ばなかった。


刹那は二丁の銃で冷泉を撃った。

最初は弾かれていたが、『妖術 乱れ撃ち』で百発ほどの弾丸を撃つと、すべては弾けず傷を負ってしまう。

それによって冷泉の動きが鈍った。

その後も冷泉に向けて発砲し続けた。


冷泉は血まみれであり、息も荒くなっていた。


(そろそろとどめか)


刹那がそう思った時、導き手である京極天明が合流した。

京極は冷泉をいったん休ませると、刹那に向かって刀を振るった。


(口調はゆったりとしているが、この威圧。今まで出会った導き手の中で一番強い)


刹那がそう感じるほどに、京極は威圧感を放っていた。

冷泉を傷つけた『妖術 乱れ撃ち』を放っても、京極には通じなかった。

『妖術 氷柱結界』で京極を貫こうにも、見切られてしまった。


動いている標的に弾を当てるのは結構難しい。

刹那は銃ではなく剣を作ると、二刀流で京極に対抗した。

今までの導き手によって磨かれてきた剣術は、京極にも通用した。

剣の長さを変えることで間合いを見切らせず、京極に傷をつけることに成功した。


このまま攻撃できるかと思った矢先に、冷泉が復帰する。


(二人相手は面倒だ。片方は強いしな)


そう考え、『妖術 吹雪』によって雪を降らせる。

これで、視界と体温を奪うことができる。


この二人によって挟み撃ちされると、刹那は全方位に乱射した。

そして、『妖術 氷柱結界』によって二人を氷柱で貫いた。

しかし、冷泉は止まらずに刹那の首に刀を振るう。

すかさず銃で撃とうとする。

しかし、


「舞刀術 流紋岩」


京極に阻止され、そのまま首を斬られてしまう。

消滅していく刹那。


(こいつらが雪那の夫だったらなぁ)


刹那はそう思いながら消滅していった。





*幕間完結です

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