三章 第十一話

*如月視点です




如月と炎楽が朱天を倒してから三日後。

如月は東雲と救護屋敷で話していた。

水珠と戦った時ほど怪我を負っていないが、精神的ショックを受けていた。

ここ二日は全く食べものがのどを通らなかった。



「二紋様について分かったことがあるので、お話ししようと思ったのですが、、、今日はやめときますか?」


東雲が言った。

それほどまでに如月は落ち込んでいた。


「いや、聞いておく」

「分かりました」


東雲は、新たに分かったことを話し始めた。



二紋様とは、生まれたときから紋様を持っていた付喪神のことで、四体いること。

二紋様が原因で紋様持ちが生まれていること。

二紋様は、八百年前からいるということ。



「新たに分かったことで、重要なのはこれくらいです。四体から増えているのかどうかはわかりませんでしたけど」

「いや、増えていない。朱天があと二人いると言っていた」

「それは良かったです。もし増えていたら大変ですから」

「なぜ今まで二紋様についての情報が出てこなかったんだ?」

「私が見つけた文書もかなり古くて虫食いでしたし、それに、誰も二紋様に勝てていないからだと思います」

「確かに、奴らは強かった」

「では、しっかり休んでくださいね」


そう言って東雲は帰っていった。



東雲が帰った後、如月は炎楽との思い出を振り返っていた。


如月と同い年である炎楽。

炎楽と出会ったのは、付狩りの任務の時だった。

ともに付喪神を倒したことで仲良くなり、一緒に修行をしたり、ご飯を食べたりするようになった。

そして、ともに付狩りの最上位である導き手を目指し、同時になった。

炎楽は、友であり、好敵手だった。

それほど、かけがえのない存在だった。


如月が導き手になって四年。

その間に、何人もの導き手が死んでいった。

そのたびに如月はショックを受けていたのだが、炎楽ほどの存在はいなかった。

どこかでそういう仕事だからと割り切っていた。


だが、その炎楽が死んだ。

炎楽との過去はあっても、炎楽との未来はなくなってしまった。

いまだに悲しいし、納得できていない。

割り切れてもいない。

だが、如月は炎楽が最後に言った言葉を思い出していた。


「お前は、前を向いて生き抜け」


ただ、「生き抜け」ではない。

生き抜け」と言ったのだ。


いつまでも泣いてばかりではいけない。

落ち込んでばかりではいけない。


炎楽はそう言いたいのだろう。


「炎楽、お前に後悔がないのなら、それでいい。ただ、もう少しだけ、少しでもいいから、もっとお前といたかった」


そうつぶやく如月。

暑い日差しが、如月に降り注いでいた。





*これで三章完結です

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