三章 第十話☆

*朱天視点になります




朱天は、八百年前に生まれた付喪神だ。


もともとは、とある夫婦の指輪だった。

夫は狩り人をやっており、妻は仕立て屋で働いていた。


夫のほうは龍を狩ったこともあるほど凄腕の狩り人であり、後輩からの信頼も厚かった。

また、妻のほうも美人であり、その仕立て屋は大人気だった。


この二人は、夫のほうが龍を狩ったときに結婚をしたのだが、その時夫が妻に渡したのが、龍の逆鱗で作った指輪だった。

二つ作ってもらっており、夫と妻でおそろいだった。


妻はそれを気に入っており、いつもつけていたし、夫のほうも肌身離さず持っていた。


そしてある時、、

この村に再び龍が現れた。



龍というのはかなりの脅威だ。

普通は、龍というのは人里離れたところで暮らしているため、まず人間が見る機会がほとんどない。

村などに現れる龍というのは、何らかの理由で群れを追放されたはぐれなのだ。

ゆえに、気性が荒く人間を襲うため、討伐対象になっていた。



夫は、かつて龍を倒したことがあるという理由で、討伐隊に召集された。


妻は夫の無事を願って、毎日指派を握っては祈っていた。

しかし、その祈りは届かなかった。


夫は、後輩たちをかばう形で、命を落としたのだ。

妻は引きこもってしまい、体調を崩してそのまま死んでしまった。


二人は指輪とともにお墓に入れられた。

そしてその後、、、朱天が誕生した。



朱天は生まれたときから龍の紋様を持っていた。

生まれたときから紋様を持っているのも特殊だが、さらに、生まれた理由も特殊だった。



通常、付喪神は人間への負の感情が影響して誕生する。

同じ二紋様である水珠も、玉藻を守りたいと願っていたものの、人間への恨みが原因で付喪神になった。



しかし、朱天は人間への負の感情は皆無だった。

では、なぜ生まれたのか?

それは、朱天が龍の逆鱗でできていたことが原因だった。

材料がかなり特殊だったのである。

また、朱天がこの二人を守りたいと思っていたが、守れなかったという負の感情が原因だ。


そうして付喪神となった朱天は、何もできなかった自分を鍛えるために修行の日々を送っていた。

あちこちを回っていた。

そしてある時、紋様が二つになったのだ。

そうした生活の中で、強者との戦闘を楽しむようになった。


その結果、導き手を殺してきたのだった。

朱天が狙っていたのは、導き手や付狩りであり、普通の人は一切襲うことをしなかった。



そしてとある夏の日。

朱天は強い気配がすると立ち寄った村で、導き手である西園寺炎楽と交戦した。

西園寺家の人間と戦うのは久しぶりだった。


最初は『妖術 纏』を使い、手足に炎をまとわせて戦っていたが、炎楽が予想より強かったこともあり、尾も使って戦っていた。

自身の格闘技と尾を使った攻撃によって、朱天は炎楽の両目を斬ることに成功した。


しかし、炎楽はあきらめていなかった。

両目を失ってもなお、朱天に食らいついてきた。


(なんで見えてないのにこんなに攻めてくるんだ)


それでも炎楽の動きが鈍くなっているのも事実だった。

朱天は炎楽の左腕を斬り落とす。

これにより、炎楽が朱天に勝つのはほぼ不可能になった。


朱天はとどめを刺そうと炎楽に拳を振るう。

そこへ、、、


「舞刀術 鬼事」


如月朱雀が参戦してきた。

如月は包帯を巻いており、万全ではないことが明らかだった。

朱天と如月の刀と拳がぶつかり合う。


「「うおおおおお」」


如月も朱天も声を上げた。

そこへ、炎楽が復帰する。


「舞刀術 鬼事」

「舞刀術 陽炎」


二人が龍のように絡み合い、朱天に迫る。


「なめるなよ、、、妖術 龍の息吹・双拳」


朱天は両方の拳から巨大な火炎弾を飛ばした。

それぞれが如月と炎楽のほうへ向かう。

それを二人は受けると、背後に回った如月の刀が朱天の首に迫る。


それを受け止めると、如月に拳と尾を貫こうとした。

しかし、


「舞刀術 陽炎」


炎楽によって阻まれてしまう。

さらには、毒の苦無を食らってしまう。


(苦無、、、)


「これは、、、毒か。再生しない。妖術も出せない」


そして、如月によって首を斬られた。

首が地面を転がる。


(負けた、、、か。だがいい。俺は満足だ。あいつらは強かった)


朱天は満足げに消えていった。

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