付喪戦記

三章 第九話

如月と朱天は激しくぶつかり合う。

ドンドンドンドン！！！！

「「うおおおおお」」

如月も朱天も声を上げる。

「そこまで怪我をしてまだなお食らいつくか」

「どこまでもくらいついてやる」

しかし、如月は消耗していた。

朱天は付喪神、、、

そして、如月は人間である。

体力にも差があるし、怪我を負っても如月は再生などするはずがない。

それでも如月は刀を振るった。

その時だった、、、

「舞刀術　陽炎」

意識を失い倒れていた炎楽が参戦してきた。

炎楽の目がようやく見えたが、かなり痛々しかった。

朱天の腕と尻尾が斬られる。

「すまない、少し気を失っていたらしい」

「その傷では、、、」

「あいつは俺らで殺す」

かぶせるように炎楽は言った。

その言葉に、如月は炎楽の覚悟を感じた。

「ほとんど見えてはいないが、気配は感じ取れる。俺ではあいつの首は斬れない。朱雀、お前が斬れ」

「怪我人が増えたところで、俺を殺すことはできねぇよ。まあ、殺せたところで二紋様はあと二人いるけどなぁ。妖術　逆鱗」

「舞刀術　爆裂」

「舞刀術　花札・五光」

如月も炎楽も少し攻撃を受けてしまう。

「やはり片腕では威力が落ちてしまうか」

「大丈夫か？」

「心配するな。今は目の前の敵に集中だ」

「だが、、、」

「威力が落ちたのなら、手数で補うまで」

そう言って、炎楽は刀を振り回す。

如月も刀を振るう。

それでも、朱天の首は斬れない。

むしろ、如月たちに傷が増えていった。

「舞刀術　鬼事」

「舞刀術　陽炎」

二人は、揺らめくように動いて斬りつける技を繰り出す。

それはまるで、二頭の龍が絡み合っているかのようだった。

「なめるなよ、、、妖術　龍の息吹・双拳（そうけん）」

朱天は両方の拳から巨大な火炎弾を飛ばした。

それぞれが如月と炎楽のほうへ向かう。

「舞刀術　爆裂」

「舞刀術　百人一首・渡り手」

それぞれ火炎弾を打ち消した。

朱天は炎楽のほうへ向かうが、背後から如月が接近する。

如月は朱天の首に刀を振るう。

しかし、、、

朱天に受け止められてしまった。

（受け止められた。。。刀が抜けない）

朱天が如月に拳を振るう。

さらに、尻尾も如月を突き刺そうとしていた。

「死ね」

「させない。舞刀術　陽炎」

炎楽が朱天の両腕と尻尾を斬り落とした。

しかし、炎楽は力尽きたかのように倒れてしまう。

そして、、、

ブスッ

朱天の背中に苦無が刺さった。

橘が苦無を投げたのだ。

「これは、、、毒か。再生しない。妖術も出せない」

「首を斬れ、朱雀」

炎楽が叫んだ。

「舞刀術　百人一首」

如月はありったけの力を込めて刀を振るった。

「うおおおおおお」

橘も叫ぶ。

「行けええええええ」

朱天は首に力を籠める、、、

しかし、如月のほうが上回った。

朱天の首が転がる。

朱天は、消滅していった。

朱天がいた場所には二つの指輪が落ちていた。

しばらくすると、その指輪も消えていった。

如月は炎楽のもとへ駆け寄る。

「しっかりしろ、炎楽」

如月もわかっていた。

炎楽があのまま戦い続ければ死んでしまうことに。

それでも戦わせたのは、炎楽の覚悟を感じ取ったからだった。

「泣くな、朱雀。俺は、、、お前と同期で、、よかったと思っている。お前から、、、色々なものをもらった。ありがとう」

炎楽の目からも涙がこぼれる。

「お前には死んでほしくなかった」

「それは俺も同じだ。朱雀に死んでほしくなかったから、俺は動いた。そのことに後悔はない。お前は、前を向いて生き抜け」

そういうと、炎楽は静かに目を閉じた。

如月は、静かに涙を流した。