三章 第七話

*如月視点の戻ります




如月は、救護屋敷の部屋の中にいた。

少し離れた場所から、ドンドンドンドン!!!!という音がする。

かなり激しく付喪神と戦っているようだ。

屋敷にいる伝手もおびえていた。


(大丈夫か?炎楽の奴)


如月は心配になった。


そこへ、ポヨン、ポヨンと一匹の水玉が入ってきた。


「ん?炎楽の水玉の焔か」


焔は必死に如月に何か伝えようと、身体を変形させる。

しばらくして、如月は伝えたいことを理解した。


「炎楽が二紋様と戦っていて、両目を傷つけられた、、、か。まずいな」


如月は刀を持つと、救護屋敷を飛び出そうとした。

そこに、橘が来た。


「お前に状況報告をしようと、、、如月?どこへ行くつもりだ」


如月が刀を持っているのを見て、橘が引き止める。


「炎楽のところへ行く」

「その怪我でか?まだ包帯は取れていないんだ」

「炎楽は二紋様と戦っている。俺は二紋様の強さを知っている。見捨てるわけにはいかない」

「二紋様だとして、なおさら今のお前では、、、」

「それに、両目に傷を負ったそうだ。その状況なら、俺が行っても足手まといにはならないだろう」


如月はかぶせるように言った。

橘が言おうとしていたことを理解していたのだ。

橘は黙って、考え込んでしまう。


その時、、、


ドン!!!


大きな音がした。

土煙が上がっているのが見える。

その瞬間、如月は駆け出していた。


「待てッ」


橘が如月の腕をつかむ。


「本当に行くのか?お前が死んでしまうかもしれない」

「だとしても、俺は炎楽を見捨てることはできない」

「だがっ」

「俺は、もう誰も死なせたくないんだ」

「だったら、絶対に死なないと約束してくれ」


橘が叫ぶように言った。

如月は目を見開く。


「お前がそう思っているように、私もお前に死んでほしくないんだ」

「分かった、約束する」


如月は橘の目を見て、はっきりと言った。

橘は腕を離した。

如月は炎楽のもとへと向かった。


「本当に、、、死ぬなよ」


橘が小さくつぶやく。

その声は、如月には届かなかった。



炎楽と付喪神に近づくにつれて、状況が見えてきた。


まず目に入ったのが、倒れている炎楽だった。

付喪神が拳と尻尾を伸ばしている。

それを見た瞬間、如月は力強く地面を蹴り付喪神に接近した。


「舞刀術 鬼事」


如月は炎楽に伸びていた付喪神の腕と尻尾を斬り落とした。

そのまま付喪神の首を狙う。

しかし、付喪神は躱すと、如月から距離をとった。


炎楽のほうをちらりと見ると、左腕が斬り落とされてしまっている。

水玉の言っていた両目はよく見えなかったが、血を多く流していることはわかった。


如月は付喪神に目を戻し、刀を構えなおした。

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