三章 第四話☆

*炎楽視点です




炎楽は、付喪神の気配がするほうへ向かっていた。


(この場所がばれたのか?だとしたらまずいぞ)


救護屋敷がある村は、伝手たちの村であり、かなりの山奥にあった。

付狩りにとって重要な村であり、付喪神たちにばれてはいけなかった。


「ここらへんで強い気配がしたから来てみれば、こんな田舎とはな。ん?」

「舞刀術 鬼火」


炎楽は付喪神に斬りかかる。

『舞刀術 鬼火』は、水平切りする技である。


付喪神は軽くかわす。


(今の反応速度。それに、紋様が二つ。如月の言っていた、二紋様というやつか)


付喪神には、龍のような紋様と、炎のような紋様の二つがあった。

それぞれ額と頬にある。


(龍の紋様?生き物が付喪神になることはあり得ない。何の付喪神だ?)


考えている炎楽に、付喪神が話しかける。


「その技の速さ、完成度。お前、導き手だな?」

「そうだ。俺は西園寺炎楽。お前の言うとおり、導き手だ」

「ほぉ、俺は朱天しゅてん。西園寺家の者と戦うのは、百数年ぶりだな」


そして、朱天は威圧を放つ。


(すさまじい威圧感だ。ほかの付喪神とは一線を画している)


「行くぞ」


そう言った途端、炎楽の視界から朱天が消えた。

そして、炎楽の目の前に現れる。


(速い)


何とか朱天の殴りを刀で受ける。


(こいつは、殴打と蹴りが主か)


「いい反応速度だ。今まで戦った導き手の中でもかなりのものだろう」

「お前に言われてもな」

「お前は強い」


如月は朱天の蹴りを柄で受けるが、吹き飛ばされてしまった。


「俺はそこまで強くねぇよ。朱雀にも勝てていない」

「なら、なぜ今だに傷を負っていない?ここまで多くの蹴りや殴打を叩き込んだが、お前はうまくかわしている。お前は強い。妖術 まとい


そう言うと、朱天は手足に炎をまとった。

さらに、炎の打撃を飛ばす。


「それがお前の妖術か。打撃も飛ばせるとはな」

「遠距離だけではないぞ」


朱天は接近して拳を振るう。

炎楽も刀を振るった。

刀と拳がぶつかり合う。


ドンドンドン!!!


土煙が上がる。


(近距離では蹴りや殴打、遠距離では打撃が飛んでくる。それにかなりの威力。まともに直撃すれば骨が軽く折れるほどだ)


「舞刀術 業火ごうか


炎楽は刀を振り下ろした。

朱天の放った正拳突きとぶつかる。

朱天の腕が縦に斬られるが、すぐに再生してしまった。

朱天はすかさず上段蹴りを放った。


(顔を狙った蹴り技。まとっている炎のせいで、攻撃範囲がわずかに広がっている)


炎楽は回避するが、すぐに放ってきた正拳突きまでは躱しきれなかった。

顔をかすってしまい、血が流れる。


「ようやく当たったな。俺の攻撃が」

「まだまだ、こっからだ」


炎楽は笑って言い放った。

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