三章 第二話

如月が水珠と戦って一か月半後。

如月は目を覚ました。

身体には包帯がまかれていた。


(知らない天井だ。。。)


ガラガラガラ


「あ、、、起きたんだな」


扉を開けて入ってきたのは、橘だった。


(そうだった。俺は水珠と戦って、気を失ったんだ)


「お前、一か月半も目を覚まさなかったんだ。心配かけやがって」


橘は少しうれしそうに言った。


「すまない。心配かけた」

「全然大丈夫だ。それよりも、身体の調子はどうだ」

「まだだいぶ痛いな」

「そりゃ、あれだけのけがを負っていればな。結構深かったぞ。しばらくはまだ安静にしていろ」

「分かった」


如月はしぶしぶといった感じでうなずく。

その様子を見て、橘は笑った。


「動きたいんだろうが、今は我慢しろ。そう言えば、クロも心配してたぞ」

「ん?」


部屋の隅っこに一人の少女が立っている。


「お、クロじゃないか。久しぶりだな」


如月が声をかけると、コクリとうなずく。


彼女はクロ。

橘の義妹として救護屋敷に引き取られている座敷童である。

人見知りであるが、如月と橘には懐いている。


クロは、如月に近づくと包帯の上からツンツンさわり始めた。


「こらこら、やめないか」


橘が苦笑しながら注意する。


「すまない。心配かけたな」

「ん」

「お前はもう少し休んでいろよ」

「分かった」


そして、再び如月は眠りについた。

クロも自分の部屋に帰っていった。


しばらくして、、、

ガラガラガラ


「ん?東雲か。ちょっと時間が悪かったな。今寝たところだ」

「そうですか。朱雀さんの様態について聞いてもいいですか」

「ああ、部屋を変えようか」


小声でそういうと、二人は出ていった。


今来たのは、東雲蒼しののめあおい

彼女も導き手であり、東の名家、東雲家の出身だ。


名家とは、古くから付狩りをやっている一族で、四つある。

東が東雲家。

そして、西が西園寺炎楽の出身である西園寺家である。

導き手はこれら名家の者が務めることが多いが、その中でもこの二家は、どの代でも必ず導き手を出してきた。


さらに、付狩りのトップを代々東雲家の人間がやってるため、今の代は東雲蒼がトップである。

彼女は導き手になってから二年しかたっていないが、しっかりと付狩りを統率していた。



翌日、、、

再び東雲が救護屋敷を訪れた。

今度はちゃんと如月が起きている時だった。


「無事で何よりです、朱雀さん」

「ああ、東雲か。心配をかけてすまなかった」

「お気になさらず。体の具合はいかがですか?」

「まだ痛いところもあるが、大丈夫だ」

「それは良かったです。まさかとは思いますが、鍛錬しようとは思っていないですよね?」


そういう東雲の顔は怖かった。

東雲の背後に般若が見えたという。

如月は黙ってうなずいた。


「なら、よかったです。今日は、如月さんから聞きたいことがあって」

「なんだ?」

「如月さんをそこまで追い込んだ付喪神って、どんなでした?何か普通と違っていたとか、、、」

「ああ、、、紋様が二つあった」

「紋様が二つ、、、ですか」

「そうだ」

「同じ形ではなく?」

「それぞれが違う形だった。確か、二紋様と言っていたか」

「二紋様ですか。そんな付喪神は聞いたことがありませんが、、、分かりました。こちらでも調べてみます。東雲家にはそういう資料が多いので」

「ああ、後、導き手を何人も殺したとも言っていた」

「それは、、、他の導き手にも知らせるべきですね」


そう言って東雲は去っていった。

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