第三章 逆鱗の指輪

三章 第一話☆

*三章スタートです

 西園寺炎楽視点になります




如月が倒れたと聞いて、西園寺はすぐに屋敷を飛び出し、救護屋敷へ向かった。


西園寺炎楽さいおんじえんらく

導き手の一人であり、如月と同じ時期に導き手になった。

如月と同い年であり、友人でもある。


如月とはよく稽古をしていたため、如月の実力をよくわかっており、そのため、如月が倒れたと聞いてとても驚いたのだ。



救護屋敷には、橘輝夜、そして桔梗光里がいた。


「あれ?西園寺さんも来たんですか?」

「よお、久しぶりだなぁ」


橘と桔梗があいさつする。


「ああ、朱雀が倒れたと聞いたからな。急いで来た。それと、橘は半年ぶりか?」

「それくらいだな」

「それで?朱雀はどうなんだ?」

「落ち着けって。如月はかなりの重傷だが、命に別状はない」

「そうか」

「ただ、いまだに目を覚ましていない」


西園寺は黙ってしまう。


「桜華の街も大変なことになっていましたからね」

「そうだな。私も桔梗と一緒に見に行ったが、たいていの家屋が倒壊してた」

「あそこの桜も、折れたりしていましたから」

「復興は伝手も手伝うけどな」

「朱雀はどれほど強い奴と戦ったんだ。あの朱雀が意識を失うほどなんて」

「導き手の中でも二番目くらいですよね?」

「ああ。俺よりも強いと思うがな」

「西園寺さんだってかなりの実力じゃないですか」

「私は足の速さで負けたからな。結構自信あったのに」


そう橘は言うが、伝手のトップに足の速さで勝つというのはかなり異常なことなのだ。

伝手は戦闘しない分、回避などにたけており、足の速さは一般剣士では追いつけないほど速い。

その伝手のトップともなると、足の速さだけなら導き手よりも速いとされているのだ。

その橘よりも速い如月。

かなり異常である。


「そう言えば、橘は如月に会っていたな」

「そうなんですか?」

「ああ。火薬玉を渡しにいっな」

「その時に付喪神の気配とか感じなかったのか?」

「う~ん、何も感じなかったな」

「そう言えば、どうして火薬玉を渡しに行ったんですか?」

「それは、、、勘だ!」

「やはりか、、、」


西園寺は橘のことを知っており、橘の勘がたまに当たることも知っていた。


「やはりって、どういうことですか?」

「ん?ああ、橘の勘はたまにに当たるんだ」


橘がにやにやした顔でこちらを見る。

西園寺はそれを無視して続けた。


「だから、馬鹿にはできないってことだ」

「そうなんですね。実際使ったんでしょうか?」

「使ったと思う」


にやにやしていた橘が答えた。


「どうしてわかる?」

「渡した数より減っていたからな。一個」


シーンと、沈黙してしまう。

その沈黙を破ったのは西園寺だった。


「とりあえず、俺は朱雀が生きていると分かったから帰る」

「でしたら、私も本日は帰ります」

「分かった。気をつけてな」


そうして、たまたま三人が集まって始まった集会は終わった。

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