二章 第十一話☆

引き続き水珠視点です。



そして月日は流れた。


とある春の日。

曇天の空。


水珠は一人の導き手と出会った。

導き手とは何度も戦っており、今回も苦戦することなく殺せるだろうと考えていた。


扇子を振るい、水の斬撃を放つ。

それと同時に、水珠は導き手に接近した。

最初の斬撃は目くらましだ。


たいていの導き手は、これで殺すまでは行かなくても、怪我を負わせることはできていた。

しかし、その導き手は違った。

接近して振るった扇子も防がれてしまった。


水珠は全方位に斬撃を放ち、桜華の街の人たちを襲った。

しかし、、、


「舞刀術 鬼事」


すべて導き手に防がれた。

この時に、水珠はこの導き手が今まで殺してきた導き手よりも強いと実感した。

しかし、水珠は焦らない。


なぜなら、先ほどの全方位の斬撃で傷を負わせたからだ。

導き手から血が垂れる。


それからは、お互いの技と技がぶつかり合った。

水珠も『波紋刃』や水の斬撃で導き手を殺そうとした。

それでもなお、目の前の導き手は倒れなかった。

『雨乞い』によって雨が降っており、導き手の体温を奪っているはずである。

それに、負っている傷も軽傷ではなく、むしろ重症と呼べるほどだった。

それに、動きも鈍くなってきてはいる。


(なのに、なんでこいつはまだ動けるのよ)


水珠は内心でイラついていた。

そこまで苦労せず殺せると思っていた相手が、予想以上に粘っていること。

そして、自分の首を斬られかけたことにだ。


水珠は首を一瞬だけなら水に変えることができるため斬られるのは防いでいたが、下に見ていた相手に首を斬られかける。

これほど屈辱的なことはなかった。



『水龍乱舞』で導き手を水に閉じ込めたとき、導き手の雰囲気が変わった。

虚空を見つめているかのような目。

そして、動く速さ。

先ほどまで鈍くなっていたが、それが感じられない。

自身が傷つくのを全く恐れていないかのように突っ込んでくるのだ。

これには、水珠も恐怖を抱くほどだった。


(なんで突っ込んでくるのよ。感覚ないんじゃない?)


そして蹴り飛ばした後に、雰囲気が元に戻った。

動きもまた鈍くなっている。


水珠は、なぜボロボロになってまで戦うかを導き手に問いかけた。


「ハァ、ハァ、それは、、、俺が、、、導き手だからだ。ただ、、、それ以前に、、、誰かが悲しむのを、、、もう見たくない」


導き手はそう答えた。

水珠には、人間がそこまで守る価値があるのか分からなかった。

確かに、あの娘は人間で、水珠を大切にした。

しかし、玉藻を殴り、水珠を玉藻から奪ったのもまた人間だった。


「あの娘には、だれも手を差し伸べてはくれなかった。そんな人間は、いなくなればいいのよ」

「人の振り見て我が振り直せ。恨みを持つなとは言わない。だが、お前の言う"その子"は、誰かが傷つくのを良しとする人間なのか?」


玉藻は、そんな人間ではなかった。

誰よりも優しかった。

それは、水珠も知っていた。

それでも、水珠は許せなかった。

手を差し伸べなかった人間が。



そして、水珠は首を斬られた。

導き手が放ったのは二連撃の技で、一撃目で首を水に変えてしまったため、またすぐに変えることができなかったのだ。


「負けた、、、このあたしが?」


首が地面を転がり、身体が崩れ始めていた。


「生まれ変わったら、大切にしてくれ人のもとに行けるといいな」


消えゆくとき、その導き手はそう言っていた。

水珠はあの娘、玉藻を思い浮かべる。

水珠は穏やかな気持ちで消滅していった。





*これで二章完結です

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