二章 第十話☆
水珠視点になります。
付喪神が生まれたのははるか昔。
人間が物を使うようになってからだ。
水珠が生まれたのは、八百年前のことだった。
桜華という街は、とある貴族が治めていた街だった。
水珠は、母の形見としてとある娘、
この扇子は、有名な職人によってつくられた扇子であり、とても美しかった。
そのせいだろうか。
桜華を治めていた貴族の娘の目に留まってしまい、その娘は無理やり奪おうとした。
母の形見である。
当然玉藻は拒否したが、貴族の護衛に暴力を振るわれ、奪われてしまった。
貴族の娘はその扇子を大切にせず、すぐに飽きると、池に捨ててしまった。
冷たい水の中、誰にも見つけられなかった。
その扇子は、玉藻を守れなかったことを後悔した。
自分がただの扇子であり、自由に動けないことを恨んだ。
(どうして玉藻を殴る?私は何もできなかった。あの娘を助けたかった。。。)
そして、強い憎しみを抱いた。
(どうして捨てた?憎い、、、許せない)
そしてその扇子は付喪神となった。
生まれたときからすでに、額に扇子を模した紋様があった。
玉藻の母親の名前である『水珠』と名乗り、人間を襲うようになった。
そして、池に捨てられたことで、水珠の使う妖術が"水"になったのだ。
そしてある日、水珠は桜華の貴族を襲った。
その家の護衛たちが懸命にかかってくるが、付喪神となった水珠が返り討ちにしてしまった。
水珠は復讐を成功させたのだ。
付狩りも来たが、それも返り討ちにした。
それほどまでに、水珠は強かった。
復讐を成功させた後、水珠は玉藻を探したが、もともと玉藻は身体が弱く、すでに死んでしまっていた。
それから桜華を拠点に、人間を襲っていた。
紋様持ちはほかにもいたが、誰も初めから紋様なんてなかったため水珠は自分が特別だと感じた。
そしてある時、水珠の紋様が二つになった。
この時に、『二紋様』と呼ばれるようになった。
二紋様になってからも、水珠は人間を襲い続けた。
大切にされていたことよりも、人間に対する憎しみが勝ってしまったのだ。
何より、水珠自身が不幸だったのに、他人が幸せそうにしているのが許せなかった。
ときに、付狩りの中でも特に強い導き手と戦うこともあった。
水珠自身は、あまり戦闘を好んではいない。
それでも、導き手が相手となると少しだけ楽しかった。
それは、水珠にとって鍛錬になるからだった。
付喪神が強くなるのは、人間と同じで鍛錬するしかないのである。
こうして、導き手と何回も戦っていく中で、水珠はほかの付喪神たちとは比べ物にならないほど強くなっていった。
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