二章 第八話

如月は『舞刀術 隠れ鬼』によって水珠の首を斬る手がかりを見つけた気がした。


(今の俺ではそれをできる機会は一度のみ。失敗すれば俺が力尽きる)


水珠は二回首を水に変えた。

それは、そうしなければ斬られていたのが二回あったということだ。


「これ以上首を斬られるわけにはいかないわ。もう近づけさせない。妖術 水龍乱舞すいりゅうらんぶ


水珠は水の龍を二頭作り出した。

その龍が家屋を壊しながら如月のほうへ向かう。

また、水珠は水の斬撃も放っていた。


「舞刀術 鬼事」


如月は龍や斬撃を斬りつけながら水珠に近づいていく。

水の斬撃は壊せても、龍を壊すことはできなかった。


(この龍は斬れない。切ってもすぐ元に戻ってしまう)


気が付けば、如月は水の龍に囲まれてしまっていた。


「しまった」

「溺れて死ね!」


水の龍にとらわれてしまった。


ブクブクブク…


(息ができない。何とかしなければ)


如月の意識が遠のいていく。










ドン!!!!


爆発のような音がした。


「なに?あいつの火薬はもう使えないはず」


水珠の視線の先に、水の龍の中に閉じ込めたはずの如月がいた。

先ほどの音は、如月が脱出した音だったのだ。


「もう脱出したっていうの?早すぎる」

「舞刀術 百人一首」


水珠が扇子を振るって水の斬撃を出すより先に如月が動いた。

水珠は回避したが、驚いた様子だった。


「なんでまだそんなに速く動けるのよ」


つい先ほどまで動きが鈍くなっていたのである。

しかし、今見せた如月の動きは『舞刀術 隠れ鬼』ほどではないが、水珠がかろうじて見えるくらいだった。


「あなた、雰囲気が変わっているじゃない」


水珠の斬撃が当たって血が出ても、如月は全く気にしていないというように刀を振るった。

如月は、痛覚が鈍っていた。

いや、痛覚だけではなく、意識がない状態で戦っていた。



負った傷も軽傷とは呼べず、さらに『舞刀術 隠れ鬼』を使った反動、水の中に閉じ込められ息ができなくなったこと。

それにより、如月は『極限状態』、もしくは『火事場の馬鹿力』と呼べる力を発揮したのだ。

意識がないことで、痛覚も鈍くなっている。

水珠が雰囲気が変わったと感じたのは、そのためだった。



如月は水珠の両腕を斬り落とし、さらには首も斬りかかる。

しかし水珠は躱し、如月を蹴り飛ばした。


「さっきのお返しよ」


如月は柄で防御するが、飛ばされてしまう。

家屋のがれきにぶつかったところでようやく止まった。

背中を強く打ち付けてしまう。

しかし、そのおかげで如月は意識を取り戻した。


「はっ、俺は、、、意識を失っていたのか」


若干だが、如月は無意識下での戦いを覚えていた。

如月は立ち上がると、水珠のもとへと向かった。

如月の髪から、水がしたたり落ちていた。

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