二章 第六話

如月と水珠の戦いは激化していた。

雨が強く二人に降りかかる。


何度も何度も刀と扇子がぶつかる。

激しい雨は、如月の体温を奪っていった。


(まずいな。雨のせいで俺の体温が奪われている。早く決着をつけないと、俺が死ぬ)


さらには足場も悪くなっていた。


如月は水珠に接近しようとするが、滑ってしまい体勢を崩してしまう。


「くっ、こんな時に」


その隙を見逃す水珠ではない。

如月との距離を詰め、扇子を振るった。


「舞刀術 かくれんぼ」


如月は素早くそれを回避した。


舞刀術 かくれんぼ

この技は、如月の舞刀術の中で、回避に特化した技である。

敵の視界から一瞬で消え去る。

ゆえに、かくれんぼというのだ。


水珠も、如月の姿を見失っていた。


「消えた?」


如月は、隙ができた水珠の首に刀を振るう。


(これで終わりだ)


しかし、水珠は如月のほうを見て、笑みを浮かべた。

如月の刀が水珠はの首をすり抜ける。


(すり抜けた?どういうことだ?)


水珠は扇子を振るい、如月を斬りつけた。

血が落ちる。

如月は距離をとった。


「あはははは、驚いてるわね。どうして首を斬れなかったのかって。あたしは水を操る付喪神。自分の身体を水にすることくらい容易だわ」

「ハァ、ハァ、なるほど。首を水に変えたのか。だが、常に水にしていないところを見ると、一瞬しか水にできないようだな」

「な?」


今度は水珠が驚いた顔をする。


「その顔を見るに、図星ってところか」


如月は刀を振るう。

しかし、その動きは鈍ってきていた。

簡単に防がれてしまう。


「確かにあたしは一瞬しか水に変えられないけど、あなたの動きも鈍ってきてる。そりゃそうよね。雨で体温が下がっているだろうし、それだけの傷を負っているもの。あなたにあたしの首は斬れないわ」

「お前に言われなくても、俺の状態は分かっている。だが、言わせてもらう。俺はお前を斬る」

「なら、早く決着をつけようかしら。妖術 波紋刃はもんじん


水珠は、全方位に斬撃を放った。

それは波紋のように広がり、周りの建物を斬り崩した。


「あら、躱したのね」


如月は上に跳ぶことで回避していた。

水珠は普通の水の斬撃も放った。

雨と夜の闇によって反応が遅れてしまう。


(雨だけのせいではないが、水の斬撃が見えにくい)


さらに水珠が距離を詰めてくる。


キンキン!

バシャバシャバシャ


「舞刀術 かくれんぼ」


如月は水珠の攻撃を回避すると、水珠が見失っているうちに水珠を蹴り飛ばした。

水珠も、まさか蹴りが来るとは思っていなかったようで、簡単に蹴り飛ばされていた。

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