第二章 夜雨の扇子

二章 第一話

万華との戦いからは二月ほどたったある日。


この二か月間は、特に語るような出来事はなかった。

万華との戦いのように如月が怪我することもなく付喪神を討伐し、そして鍛錬をするというような日常だった。

しいて言うならば、たまに桔梗が来て世間話をしたり、稽古をしたりしていた。


そしてこの日、如月は付喪神と戦っていた。

曇天の夜。

この付喪神は傘の付喪神であり、傘を刀のように振って攻撃してきた。

当然のように紋様持ちである。

額の右側に、傘を模した紋様があった。

特殊な能力は持っていないが、身体能力がかなり高かった。


街中での戦いのため、周りの家屋に気を使いながら戦う。

暗い時間のため、人通りはなかった。


ガンガン!


傘のため、斬られることはないがかなりの力である。

気を抜けば飛ばされそうな程である。

如月は傘を斬り飛ばすが、すぐに再生する。


「くそっ」


付喪神は、屋根の上へ逃げる。


「逃がさない」


如月も地面を蹴って屋根の上へ行く。


ガンガン!ガン!


傘と刀が激しくぶつかり合う。



「舞刀術 百人一首」


如月は一瞬で付喪神の首を斬った。

そのまま付喪神は消滅していった。


フー、と息を吐き、刀を鞘に納める。

空を見上げると、今にも雨が降りそうだった。


桜の季節であり、花びらが舞ってくる。

とても幻想的な景色だった。



ここは『桜華おうか』という街。

桜並木が見事な、桜の名所でもある。

街並みもきれいなため、人気の観光地となっていて、宿も多い。



ここに、誰かと来ることがあるだろうか。

舞い散る桜を見ながら、ふとそんなことを考える。


如月は、自分の性格をよく知っている。

外交的でなく、友人と呼べる人も少ない。


それでも、、、


(ほかの導き手たちと来れたら、、、な)


そう思えるほどに如月は現在を気に入っており、そう思わせるほど街並みが綺麗だった。



そして如月が帰路に就こうとした時、、、ポツポツと雨が降り始めた。

そして、、、


ザッ、ザッ


(これは、水の斬撃。付喪神!)


水の斬撃が地面を抉る。

如月は抜刀し、戦闘態勢に入る。


(どこからだ?どこから攻撃された?)


如月は敵の居場所を探ろうと神経を集中させるが、雨によって阻害されてしまう。

付喪神からの攻撃は最初の二撃だけだったが、如月もまた付喪神を探ることができなかった。


(雨が降っていたとはいえ、攻撃されるまで気が付かなかった。この街にいた付喪神は、一体だけではなかった)


東雲しののめに伝えてくれ。俺はしばらく桜華にいる、と」


如月は自身の水玉、『玄武げんぶ』に指示を出した。

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