一章 第九話

万華のもとへ向かうと、万華は起き上がったところだった。


「よくもやってくれたわね。私を蹴り飛ばして。絶対に許さない!」


万華は爪の斬撃や蹴りなどで攻撃する。

攻撃自体はそこまで速くないが、厄介なのは万華に与えた傷が自分にも返ってくることだった。

如月は防御のために刀を振るうが、それによって万華の手や足に傷がつき、返ってくる。


ポタポタと血がしたたり落ちる。


(これが、こいつ本来の戦闘方法)


鎌を使っていた時からわかっていた身体能力の高さが、いかんなく発揮されている。

そして、傷の『反射』とも呼べる能力。

肉弾戦とこの『反射』の能力がうまくかみ合って、如月と渡り合っていた。


「動きが鈍くなっているわよ、導き手さん」

「なに、お前の首をどう斬るか考えていただけだ」

「ふっ、やれるもんなら、やってみなさいよ。守ってばかりのあなたに、斬れるわけないけどね」


その言葉を聞き、ハッとする。


(俺は、、、自分を守ることばかり考えていた。だが、俺の仕事は付喪神を斬ることだ)


「お前のおかげで思い出せた」

「何をよ」

「攻撃こそ最大の防御ということをな」

「なら、私が逆に教えてあげるわ。防御こそ最大の攻撃ってことをね」


如月の斬撃と万華の打撃がぶつかり合う。

防御するときは柄の部分で受け、攻撃するときは素早く刀を振った。

万華に与えた傷が返ってくる。

それでも如月は刀を振り続けた。


「私の防御は反射の力。あなたが傷つくだけよ」


如月には多くの傷ができていた。


「そうかもな。だが、ようやくお前の首を斬る道筋が見えた」

「そんなに傷だらけで、いまさら何ができるのよ」

「舞刀術 鬼事おにごと


如月は、万華の打撃をかいくぐるように動く。

本来は一対多という状況で威力を発揮する技。一体

うねるように素早く動きながら敵を斬りつける攻防一体の技である。


しかし、今回如月は斬りつけるのではなく、移動手段として使った。

そして、万華を翻弄する。


「なによ、その動きは」


万華は、攻撃を当てられなくなっていた。

万華に隙が生じた。


(これで決める)


「舞刀術 百人一首」


一瞬の隙を見逃さなかった如月は、万華の首を斬り落とした。

万華の首が転がる。


「斬られた、、、嘘、嘘よ!」


崩れていく万華の身体。

それと同時に、鏡の世界も崩れていく。

そんな万華に如月は近づいた。


「お前は、人間が自分を認めないと言っていた」

「そうよ、誰も私を見てはくれなかった。いつも人間が見ていたのは、私に写った自分の姿。。。どうして誰も私を見てくれないのよ。。。」


万華の目から涙が落ちる。

万華は自分自身の役割に苦しめられていたのだ。


「人間を襲ったことは許されないが、お前は強かった。俺が認める」


如月は、温かい目でほほ笑んだ。


「ありがとう。。。」


万華は最期、笑みを浮かべて消えていった。

それと同時に、鏡の世界も完全に崩れ去った。

鏡の破片がキラキラとして、とても幻想的に見えた。

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