一章 第四話

如月視点に戻る。


「ここか」


如月が付いた時、付喪神に一人の剣士が斬られようとしていた。

木々は折れ、戦闘の激しさを物語っている。


「舞刀術 百人一首」


如月は、一瞬で辻切の懐に入り、抜刀と同時に水平切りを放った。

吹き飛ぶ辻切の両腕。

そのすきに剣士を抱え離れた場所に横にならせた。


付喪神は、如月の速さに驚いているようだった。


「ちっ、仕留めそこなったか」


辻切は、すぐに両腕を再生した。


(今の再生速度といい、紋様持ちの中でもそこそこの実力か。額にある鎌の紋様も、濃く、はっきりしている)


如月は付喪神を観察した。

紋様持ちは、紋様が付喪神自身を表すため、何の付喪神かが分かりやすいのだ。


「やるなぁ、お前、導き手だな?ならば、妖術 鎌鼬」

「風の斬撃!」


辻切の放った風の斬撃を刀でうまく受ける如月。

怪我を負った剣士がいるため、この場所で戦うのは危険だと考えた。


如月は、一気に辻切との距離を縮めた。

辻切もまた、二本の鎌を振るって応戦する。

如月と辻切は、火花を散らせながら刃を交えていく。


(導き手の中に二刀流はいない。今まで戦ってきた付喪神にも、二刀流はいなかった)


如月は、初めて戦う二刀流の相手に、やりにくさを感じていた。

それでも、如月のほうが優勢だった。

辻切の攻撃をはじきながら、如月は押していく。

そして二人は、山頂付近の開けた場所に出た。


「ここなら、大丈夫そうだ」


先ほどの場所から離れたことを確認すると、如月は攻撃を速くした。

辻切は導き手をなめていたのか、その速度に驚愕の表情を浮かべていた。


「くっ」


如月には傷一つついていないが、辻切は何回も斬られていた。

ただ、如月も首は斬れていなかった。

辻切が二刀流のため、防がれてしまうのだ。


厄介だ、と思いながらも、如月は攻撃を緩めなかった。


「妖術 鎌鼬」


辻切は鎌ではなく、身体から風の斬撃を飛ばした。

危険を感じた如月はとっさに後ろへ跳んだ。


(予備動作なしで風の斬撃を放った。あのまま突っ込めば危なかった)


土煙が上がる。

辻切は、土煙のほうに向かってさらに鎌鼬を放つ。

一方、如月は、飛んでくる鎌鼬を受け流していた。


(やるな、あの付喪神。まさか予備動作なしでも斬撃を放てるとは。いつ放たれるか分からない、回避が難しい技。鎌ではなく、身体から放たれていた。だが、威力は落ちていた)


如月は技を受けながらも、冷静に分析していた。


如月は、斬撃が飛んでくるほうへ駆け出した。

土煙から飛び出し、辻切に向かって刀を振るう如月。

辻切は、無傷の如月に驚いていた。


「ありえない。あれほど鎌鼬を食らっておいて、、、」


キンキンキン!!!

鎌と刀がぶつかり合い、火花を散らす。


「俺は、俺を捨てたやつらを見返すために、ここで死ぬわけにはいかないんだよ!!」


辻切は、鎌を振るうが、それでも如月には届かなかった。


「舞刀術 百人一首」


ついに、如月の刀が辻切の首に届いた。


「まだだ、、、妖術、、、」


しかし、辻切が『鎌鼬』を放つ前に、如月が辻切の首を斬り落とした。


辻切の首が舞う。


「体が崩れる、、、だが、お前だけは殺す」


辻切は、最後の力で『鎌鼬』を放った。

それは、今までで一番速く、範囲も広く、周辺の木や土、雪をすべてを吹き飛ばした。


辻切の首を斬った如月は、刀を構えたままだった。


(なんだ?空気が揺れている?)


次の瞬間、倒したはずの辻切から風の斬撃が放たれた。


「今までで一番速い風の刃か。やってくれるな」


刀を振るい、すべてを受けきった。


「今のは少し危なかった」


如月は、辻切が消えていくのを見届けると、去っていった。

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