一章 第五話

辻切を倒してから数日後。


桔梗が如月邸を訪れていた。


「また来たのか、桔梗」


桔梗の家である桔梗邸は、如月邸に近い場所にあるため、桔梗は良く如月邸に遊びに来ている。


「いいじゃないですか。私と如月さんの家は近いんですから」

「いや、ここ俺の家なんだが。。。まあ、せっかく来たんだったら、何かしていくか?」

「何かしていくって言っても、如月さんとやるのは、いつの打ち合い稽古か将棋じゃないですか。如月さん、将棋は導き手の中で一番強いので、嫌ですよ」

「そうか。なら、打ち合いになってしまうが」

「どれだけ稽古好きなんですか。たまには違うことしましょうよ」


呆れた顔で如月を見る桔梗。


「違うことと言われてもな」

「私は、如月さんの話が聞きたいです」

「俺の?」

「如月さんは、私が導き手になる前から導き手だったじゃないですか。何かないんですか」

「。。。」

「あ、では、如月さんが苦戦した付喪神っていないんですか?」

「俺が苦戦した?」

「はい、如月さん、付喪神と戦っても怪我を負わないじゃないですか」

「楽に倒せた付喪神はいないぞ。紋様持ちは結構きついし、ふつうに怪我も負う。まあ、かなり印象に残っている者はいる」

「印象に残っている、、、ですか?」

「ああ。桔梗は『座敷童』を知っているか」

「見たら幸運になるって噂の奴ですか」

「俺は座敷童に合ったことがある」

「自慢ですか?」

「自慢ではないが、、、俺は、座敷童と戦ったことがあるんだ」

「なんて罰当たりなんでしょうか」

「それを言われるとな。。。まぁ、その座敷童の話だ」


そう言って、如月は当時のことを思い出しながら語り出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


これは四年前、如月が導き手になった頃である。

その日は付喪神の討伐が終わり、如月は家に帰る途中だった。

結構遅い時間だった。


町はずれのとある一軒家の前を通ったときのことだった。

如月は何者かに襲われた。


ヒュッ!


とっさに躱し、刀を抜いた。

そこにいたのは、少女だった。

おそらくまだ成人していないと思われた。


(なぜ、こんな時間に少女が?)


少女は包丁を振るい、攻撃してきた。

キンキンキン!!!

如月も刀で防御する。

ただ、この少女を傷つけてはいけない、そんな気がした。


(少女とは思えない力、それにこの気配、、、付喪神に近い気がするが、微妙に違う、、)


気になった如月は、少女に話しかけてみた。


「お前、何者だ?」

「お前も、私の、、、私たちの家から何か盗ろうとしてるんでしょ。そんなこと、、させない!

「ん?ちょっと待て。俺は強盗ではない」

「嘘よ!こんな時間にうろついてるなんて、完全に泥棒よ!」


なおも包丁を振り回してくる少女。

如月は刀をしまい、頭に手刀を落とした。


「話を聞け!」

「ふぇ、ふぇ、、」

「え、、ちょ、、ま、、」


泣きそうになっている少女をなだめ、如月は彼女から話を聞いた。


この家はもともとおばあさんが薬を売っていたところで、そのおばあさんが最近亡くなった後も少女がたまに薬を作って売っていたこと。

最近、泥棒に入られたこと。

そして、自分が『座敷童』であることを教えてくれた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「という感じだ」

「殺していないんですね。その座敷童、元気にしてるんですか?」

「付喪神ではないからな、殺しはしない。彼女は元気だった」

「最近会ったんですね」

「ああ」


そんな会話をしていると、如月の水玉が震え出した。


「指令か」


如月は、指令を受け取ると、眉をひそめた。


「如月さん?」

「ん?ああ、何でもない。行ってくる」


如月はそういうと、すぐに行ってしまった。


「どうしたんでしょうか?」


桔梗は、いつもと違った様子の如月を心配しながら、如月邸から去っていった。

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