【祝通算２０万ＰＶ！！】盗賊だけど大剣しか使えません！ 〜VRゲームで盗賊になったのに、大剣しか装備することが出来ず絶望していたけど、それはそれで最強だった！ 〜

七十八話 番人です！

　よりにもよって、ちょうど外に出たタイミングで敵に出会ってしまった。敵ではないというラッキーも一応期待したが、それはすぐに打ち砕かれた。出くわした大男の右上には表示名があったのである。つまり、敵であることが確定してしまった。

「貴様らか！　不審者っていうのは。どういうつもりで侵入した？」

名前が表示されているということは、もうすでに戦闘が確定しているということだ。彼の名前は「ホグミー」。何か異形のモンスターというわけでもなく、エルフらしい。

　というか、どうして俺たちのことが見えているんだ？　今は『隠密』で身を隠しているはずだろうに。

「ええ！　なんでですか！」

よこでミヤビはテンパっていた。

　そんな俺たちをよそに、ホグミーは何かに気づいたようだった。

「ん？　お前、カティーヌか？」

「……」

「いやいや、なんかしゃべれよ。もうわかったから。お前、カティーヌだろう？」

「ああ、もうくそ！　なんでよりによって貴様と出くわすんだよ！」

「え、カティーヌ、知り合い？」

「ああ、昔の同業者ってところだな。」

「おいおい、同業者って。やめてくれ、俺は盗賊になんてなった覚えはないぞ。」

「ギャングも同じようなものだろ。」

カティーヌの知り合いだったのか、この大柄のエルフ。

　ホグミーは大きな斧を振り上げて肩に載せた。

「だがまあ、俺も今となっては軍人だ。そしてこの関所を任されている。」

「なんだ？　出世自慢か？　イタイぞ？」

「だまれ、貴様らを通すわけにはいかないってだけだよ！」

ホグミーの斧は力いっぱい振り下ろされて、地面を穿った。地面には大きくひびが入り、そこから飛び出した礫たちが俺たちを襲う。

「うわ！」

「下がれ！　もろに受けるな！」

初っ端から強烈だ。

　「リリィ！　後ろに下がってろ！」

カティーヌは王女を後ろに下げた。

「ほほう。王女様を貴様が連れて行ったという話は本当だったか。まあ俺としてもリリィ王女が傷つくのは大問題だ。貴様の望み通り、王女の安全は保証しながら戦おう。」

　今の攻撃も半端なかったし、このエルフ、相当強いぞ。できることならば会うことなく脱出したかったな。

　こいつのさっきの口ぶりから察するに、ホグミーはここのボスをしている。つまり、こいつさえ倒すことができればこの関所は陥落してしまうのである。こいつをそう簡単に倒せるかどうかは別問題だが。

　結局、俺たちは予期せずして、選ぶはずじゃなかった「関所を陥落させて突破」作戦の方に舵を切ってしまっているのである。

　しかし、そう厳しい戦いでもないと思う。相手は一人だ。それに今回こちらにはカティーヌも一緒に居る。ちゃんと一緒になって戦ってくれるみたいだから良かった。

「さあ、こいつを早いところ倒して次の関所に向かうぞ。」

「言ってくれるじゃないか！」

またホグミーは斧を振り上げた。

「来るぞ！」

俺たちは一斉に距離を取った。

斧は空を切り今度は礫も俺たちには届かなかった。

　カティーヌがホグミーの攻撃終わりに一気に距離を詰めた。

「シュパン！」

彼の短剣がホグミーを捉えた！

「貴様！」

ホグミーは負けじと斧を振り下ろすものの、もうすでにそこにカティーヌはいない。

「いいですね！　完全にスピードで勝ってますよ！」

カティーヌは素早くホグミーの間合いに出入りして、ヒットアンドアウェーを繰り返した。

　カティーヌの攻撃が一方的に当たり続ける、一方的な展開だ。予想以上にカティーヌは強かった。さすが国随一の盗賊だ。

　でも、あれ？　これだけ一方的に攻撃を当て続けているというのに、ホグミーは全く倒れる気配がない。

「全然倒せませんね。」

「めちゃくちゃ当たってるのに。」

そのうち、だんだんとカティーヌの表情が苦しそうになって来た。スタミナが切れてきてしまったのである。

「貴様、だんだんと動きが鈍くなって来たんじゃないのか？」

ホグミーの攻撃がカティーヌの体にかすり始めた。まずい、もうすぐ捉えられてしまう！

　「そうだった！　自分たちがそうじゃないから忘れてました！」

突然トルクが叫んだ。

「どうしたんですか？　トルクさん。」

「盗賊って本来は、火力が出せるような職業じゃないんですよ！」

あ、そうだったわ。余りに当たり前のことなのに、自分たちがその反例になってしまっているから忘れていた。

「ああいう火力タイプの敵と一騎打ちしてしまっては、最初こそ優勢に進められますけど、そのうち相手を倒す前にこんなふうにスタミナが切れるとやられ始めるですよ！」

「じゃあ早く助けないと！」

二人が武器を抜いたので、俺も大剣を抜刀した。

　ミヤビがカティーヌとホグミーの間に駆け込んだ。

「カティーヌさん！　ちょっと下がって！」

「あ、ああ。」

「『アシッドポンド』！」

ミヤビは杖を地面に叩きつけた。

　すると、土だった地面がどんどん沼に変わっていくのである。

「なんだ、これは。」

カティーヌを追いかけて踏み込もうとするホグミーの足が止まった。

毒の沼だ。いつのまにこんなスキルを得ていたのだろうか。