ヒロインになりたくて

なしもと

本編

 生まれたときから既にご近所さんで。幼い頃はいつも一緒に遊んでいて、中学生になった今も仲良くて。家族ぐるみの付き合いもあって。

 クラスメートの須藤燈真とうまとは、そんな少女漫画にでもありそうな幼馴染みの関係だった。



 『鏡よ鏡。このお話のヒロインは、誰――?』






 学校から帰って宿題をしていると、携帯電話が鳴った。サブディスプレイには表示されていたのは、燈真の名前。わたしの着信履歴の半分は彼で埋まっている。それなのに未だに彼からの着信には一々胸が高まってしまう。

「もしもし?」

 無機物に吹き込む声が上ずってしまうのが自分でもわかる。わたしは恋する乙女か、気持ち悪い。

朱里あかり、今家?」

「そうだけど」

「今からそっち行っていい? 理科のプリントわかんなくてさ」

「うん、いいよ」

「ありがと。すぐ行くわ」

 電話が切れたことを確認し、急いで部屋を片付ける。彼の言う「すぐ」は、本当にすぐなのだ。

 タンスやクローゼットがしっかり閉じられていることを確認して。ベッドの上の布団を軽く整えて。粘着ローラーでカーペットに落ちた髪の毛を掃除して。彼がわたしから借りて読んでいる漫画の最新刊を机の上に置いて。これで、完了だ。

「お邪魔しまーす」

 家主の断りもなく燈真は家に上がり、二階のわたしの部屋までやってきた。

「おっ、これ最新刊!?」

 わざと分かりやすい位置に出していた漫画を見つけ、彼は手に取った。

「うん。読み終わったから、持っていっていいよ」

「よっしゃあ! さんきゅー、朱里」

 燈真は嬉しそうにほころんだ。今わたしだけが彼の笑顔を独占している事実に、優越感に浸る。

 彼はローテーブルの前に座り、持ってきたプリントを広げた。今日の理科の授業で行った実験のレポートだ。わたしも彼の対面に座り、プリントを覗き込む。

「わからないって、どこが?」

「全部!」

 笑顔で調子よく答える燈真に、ため息が漏れる。

「少しは自分で考えなよ」

 呆れてそんなこと言って、だけど本当は頼ってくれるのが嬉しかったりするんだけど。これは、燈真には秘密だ。

「だって、自分で考えるよりも朱里に教えてもらった方が確実じゃん?」

「そうじゃなくて、自分で考えるってことが大切なんだってば」

「そうかな? 俺は、あんまりそうは思わないけど。……それに、俺だってちゃんと考えてることあるよ」

「……何を考えてるのよ」

「朱里の誕生日プレゼント」

 頬杖をついてニヤリと笑う彼に、わたしは頬が熱くなった。

「何か欲しいものある?」

「……特に、ない」

「そう言うと思った」

 毎年わたしたちはお互いの誕生日にプレゼントを送り合っている。そして今月末に、わたしの誕生日が来るのだ。

 お小遣いで買える些細な物しか送れないけれど、わたしはこのプレゼント選びが結構好きだ。燈真が何を貰ったら嬉しいかなと想像しながらお店を回るのが楽しいのだ。そしていつも彼はプレゼントを心から喜んでくれる。その瞬間が、嬉しくてたまらない。

「朱里に何をあげたら喜ぶかな~って、毎日考えてるんだぜ?」

 偉いだろ? と言いながら、彼はくるりとペンを回してみせた。

「ま、楽しみにしといてよ。……でさ、このグラフだけど、横軸は何取ればいいの?」

 熱を帯びた頬に気づかれないよう、そっと手を当てながら彼の課題を手伝う。

 燈真がわたしのことを考えている。

 ねぇ、燈真。あなたは知らないだろうけど、わたしはそれだけで舞い上がっちゃうんだよ。


 課題を終わらせた燈真は、仰向けに寝転がって漫画を読み出した。いつものことだ。彼はわたしの部屋でも自分の家のようにくつろいでいく。わたしだって、昔はそうだった。遠慮なく燈真の家に遊びに行き、ご飯もよくご馳走になっていた。まるで家族が二つあるように感じていた。

 だけど、小学校高学年になった頃から、わたしは燈真の家に行く頻度が極端に減った。ちょうど、自分の『感情』に自覚を持ち始めた頃だ。

 今でもたまに彼の家に行けば、彼の家族は嫌な顔などせず迎え入れてくれる。さらに「前みたいにもっと遊びに来てよ」とまで言ってくれる。だけど、燈真の家からは足が遠退くばかりだった。

 だって、十四歳と言えど、わたしたちは男と女なんだもの。

 燈真がページをめくる音を聞きながら、わたしは友人から届いていたメールに返信をする。返信を終えると画面の暗くなった携帯を目の前に掲げ、携帯を操作するふりをして画面越しに燈真を眺める。直接見ているとバレてしまいそうで、こんな変態じみたことをしているのだ。ホント、気持ち悪いよ。

 しばらく燈真を眺めていると、彼のページをめくる手が止まっていることに気がついた。

 あれ、と思い携帯電話を置いた瞬間、彼は突然「なぁ、朱里」とわたしの名前を呼んだ。彼の視線は漫画に向かったままだった。

「な、何?」

 なんとなく心の中を見透かされたような気がして、返答がどもってしまう。しかし燈真は表情を変えずに続けた。

「朱里って、好きな奴いる?」

 思いがけない質問だった。わたしたちは今まで、一度もこんな会話したことがなかった。なのに、突然、どうして。

「……さあ」

「誤魔化すなよ。別に、誰にも話したりしないからさ」

 心拍数が上がって、胸が苦しくなる。なんで、こんなこと聞くの。

 燈真が誰にも話さなくたって、意味ないんだよ。だって、だって……。

 わたしは、燈真が好きだから。

「……いる、かも」

 基本的に嘘をつけない性格のわたしは、小さく答えた。燈真は漫画から視線をはずし、わたしを見上げた。耐えられず、思いっきり目をそらす。

「なに、『かも』って」

「えっと、たぶん好き」

 たぶんなわけあるもんか。すごく、好きだ。

「誰? そいつ」

「……言えない」

「そう」

 なんなんだ、この辱しめは。きっと、わたしは今顔が赤くなっているだろう。緊張と、焦りと、屈辱で。

 燈真は漫画を閉じると、体を起こした。ローテーブルの上で、彼と至近距離で向かい合う。さっき勉強していた時も同じ距離だったのに、今はもっと近く感じた。

「朱里、あのさ、俺……」

 心なしか、燈真も頬が紅潮しているようだった。そしてわたしは、ハッとあることに気づいた。

 このシチュエーション、知っている。

 昔読んだ少女漫画で、こんな場面があった。幼馴染みの男女が他愛ない会話をしていると、突然男の子が好きな子の話を始めるのだ。彼に密かに好意を寄せていた主人公は、彼から恋愛対象に見られていないと思い、落ち込む。しかし次のページで彼は、その片想いの相手は主人公のことだと告げるのだ。そして二人は結ばれる。

 まさか。まさかね。いやいや、でも、燈真のこの表情。何か思い詰めたような、そして決心したような。それに燈真だってその少女漫画を読んだことがある。まさかまさかまさか。

 わたしは不安と期待を最高潮に高ぶらせて、燈真の唇の動きを見つめていた。そして燈真の唇が重たそうに持ち上がったとき、わたしはごくりと唾を飲み込んだ。


 ページが、切り替わる。


「俺、佐川さんが好きなんだ」

 わたしの耳に入った燈真の声は、そのままするするっと抜けていく。

「え?」

「佐川さん。俺、席隣だろ? 話すこと増えて、そしたらなんか、好きになっちゃって」

「佐川さん」

「そう」

春菜はるなちゃん?」

「そう」

「春菜ちゃんが、好きなの?」

「……うん」

 燈真は赤い顔で、恥ずかし気に目をそらして頷いた。

「へぇ……、そう、なんだ」

 わたしは軽く首を傾げた。あれ。あれあれ。なんで? なんで、わたし告白されてないの?

「見た目がタイプってのもあるんだけどさぁ、なんか、なんだろ、話し方とか、声が好きで。佐川さんの声って、聴いているとすごく心地いいんだ。小川のせせらぎみたいな?」

 男子中学生が、女の子の声を川の音に例えるな。

「あと、先週の理科の実験で俺たちの班突沸起こしたんだけど、その時の佐川さんのビビり方が超可愛いの。『きゃっ』て縮こまってさ。もう、俺の庇護欲が突沸しちゃった……なんつって」

「キモ」

 うるさい。もう、聞きたくない。

 一瞬でも変な期待を持ってしまった自分が恥ずかしくて馬鹿々々しくて、消えてしまいたい。平凡な日常の中で、こんな唐突に失恋するなんて思ってもみなかった。

 春菜ちゃんは、色白で華奢なのにふんわりした雰囲気のある可愛らしい子だ。わたしとはタイプが違う。勝ち目なんてない。

「ていうか、実験同じ班なら、今日のプリントも春菜ちゃんに教えてもらえばよかったじゃない」

 いらいらしてつい口に出てしまった言葉に後悔する。本当はわたしを頼ってくれたことが嬉しいくせに。ここでもっと素直になれる性格だったら、現状は変わっていただろうか。

「その手があったか! ……いや、でも、理科に関しては朱里からちゃんと教えてもらったほうがいいしなぁ。朱里、理科得意だし」

 なんで、素でそういうこというかなぁ。そこに特別な感情がないってわかっていても、ただ自分の成績のためだけだとしても、求められているって感じてしまうんだよ。期待してしまうんだよ。

「朱里、佐川さんと部活同じだろ? 仲良かったりしないの?」

「特別仲いいわけじゃないけど、たまに話したりはするよ」

「彼氏いるとか、好きな人いるとか、そういう話知らない?」

「彼氏は、たぶんいないと思う。好きな人とか、そういうのも聞いたことないな。まあ、直接そんな話をするような仲でもないし」

「そうか」

 燈真は顎に手を当てて、何か考え出した。

「なぁ……、いきなり告白するのって、どう思う? やっぱり、二人で遊んだりする関係になってからがいいかな?」

 あぁ、そうか。わたしは、燈真の恋を応援しなきゃいけない立場なんだ。燈真の、理解者として。失恋とか言ってる場合じゃないんだ。それが仲のいい幼馴染みの役割なんだ。

「もう、仲良くなってるんでしょ?」

「まぁ、休み時間に雑談する程度だけど」

「じゃあ、とりあえずコクっちゃえば?」

「とりあえずって」

 燈真は唇を尖らせた。

 今のは失敗だったかもしれない。適当なアドバイスなんてしてると、関心がないと思われてしまう。違うよ、燈真。わたしはいつでも燈真のことを一番に考えているんだよ。

「えっと、ほら、好きじゃなくても、告白されてから気になり出すとかあるじゃん! まずは意識させることも必要だよ!」

「うーん、でも、相手にその気がなかったら今後避けられちゃったりしないか?」

「……そしたら、」

 そしたら、諦めればいいじゃん。

「何度もアタックするんだよ! 雑誌で見たんだけどね、二回、三回って告白されて付き合うカップル多いんだって。だから、一回目がダメでも、そこで諦めなければ希望はあるよ」

 燈真は意外そうな表情でわたしを見つめ、そしてクツクツと笑った。

「へえ、そうなんだ。あー、なんか、朱里に話したら勇気出たわ。よし! コクる!」

 気合いを入れるように腕を上げた燈真は、プリントを持って立ち上がった。

「俺、帰るわ! 告白の仕方考える。課題ありがとな。それと漫画も」

 燈真はバタバタと忙しなく階段を駆け降りていった。途端に家の中が静かになる。世界に一人取り残されてしまったような錯覚を覚える。久しい感覚だ。


 幼い頃から両親は共働きで、学校から帰った夕方は毎日家で一人だった。小学一年生のある大雨の日、ガタガタと揺れる窓ガラスに怯えながら両親の帰りを待っていると、燈真と彼のお母さんが訪ねて来たことがあった。

『これから天馬てんまの誕生日会するんだ! あかりもおいでよ!』

 たぶん、ほっとしたのだと思う。わたしは、二人の前で声を上げて大泣きしてしまったのだ。親の言うことはちゃんと守って、わがままも言わず、「手のかからないいい子」と母から頭を撫でられても、淋しかったのだ。一人が、怖かったのだ。

 突然泣き出したわたしに二人は当然うろたえていたが、泣いた理由を理解すると「もう寂しくないよ」と優しく笑って須藤家へ迎え入れてくれた。燈真の弟たちも、やがて帰宅した彼のお父さんも、まるで家族の一員かのように接してくれた。その日以来、親が帰宅するまで燈真の家族がわたしを預かってくれるようになった。燈真や彼の家族と過ごす時間はとても楽しかった。両親が与えてくれるものとはまた違う、優しさと温かさがそこにあった。しかし、それは一人を余計に淋しくさせた。飢餓に苦しむ子供に、親切心から満腹の幸せを教えてあげるように。当時のわたしは、一人になることを益々恐れるようになっていた。そして、それはきっと今も大して変わっていない。


 あの日、薄暗い玄関で彼の存在は輝いて見えたのだ。暗闇に光を届けてくれる太陽のように。

 その光が今、点滅している。もう、わたしだけの光じゃなくなろうとしている。




 翌朝、登校すると燈真は既に教室にいて、隣の席の春菜ちゃんと雑談していた。燈真は楽しそうだ。

 でれでれとにやけちゃって、気持ち悪い。その顔の裏には、下心満載なんでしょ。ばーか。

 わたしの席は彼らより斜め後方にある。だから授業中でも、嫌でも視界に入ってしまう。他の女の子と笑っている燈真なんて、見たくないんだよ。

 友達と話して気を紛らわして、授業中は教科書と黒板だけに集中して。それでもやっぱり気になってしまう。わたしじゃない、春菜ちゃんにだけ向けられた燈真の笑顔が、見ていて泣きたくなる。苦しくて、燈真の笑顔も彼が好きだと言った春奈ちゃんの声帯も握り潰してぐちゃぐちゃにしてしまいたい衝動に駆られてしまう。


 終学活前、自分の席で荷造りしていると、いつになく真剣な表情をした燈真が近寄ってきた。

「夜、朱里の家に行く」

 彼はそれだけ言うと、わたしの返事も聞かずに背を向けた。

 その後の部活、わたしは何度もミスをしてしまい、コーチから怒られるを通り越して体調を心配されてしまった。しかし、集中力に欠いていたのはわたしだけではなかった。春菜ちゃんもまた、時折上の空でミスを繰り返していた。


 部活が終わって家に着くと、窓からは明かりが漏れていた。帰宅したときにこの明かりが見えると、いつも安心する。

「ただいま」

 誰かが家にいると、ただいまの声も大きくなる。少しだけ、心も弾む。お母さんがいてよかった。一人だと、嫌でも燈真のことを考えて落ち込んでしまいそうだから。

「おかえり。お母さんも今帰ってきたばかりだから、夕飯の準備これからだけど」

「うん。何か手伝う?」

「いいわよ。着替えてらっしゃい。あ、着替えたらお風呂洗い頼める?」

「わかった」

 家事を手伝い、しばらくしてお父さんも帰ってきて、やっと家族三人で食卓に着いたのは午後八時過ぎだった。今夜はカレーだ。

「そういえば、今日燈真がうちに来るって言ってた」

「あら、せっかくなら夕食に呼べばよかったのに」

「いやいや、下手に男子中学生にごちそうしちゃいけないよ。食べ尽くされちゃう」

「そうかぁ、最近会ってないけど、燈真も朱里と同じ歳だもんなぁ。奴も中三か」

 ちょうど、燈真の話をしていたときだった。玄関が開く音がして「お邪魔しまーす」と彼の声が聞こえたのは。「噂をすればだな」とお父さんが笑った。

「こんばんはー。あれ、すみません、まだ夕食中でしたか」

「燈真くん久しぶりね。一緒にご飯食べましょうよ。カレー余ってるから」

「あぁ、いえ、家で食べてきたんで」

「いいじゃないか、食べ盛りだろ」

「えへへ、じゃあご馳走になります」

「はい、お皿。好きなだけよそって食べてね」

 お母さんから渡されたお皿に燈真は自分でご飯とカレーを盛り付けて、わたしの隣の椅子に腰かけた。昔から、燈真がうちの食卓に来たときはわたしの隣が定位置だ。

彼のお皿には、わたしの一食分と同じ量が盛られていた。

「燈真、食べてきたのにまだそんな食べるの」

「だって食べ盛りだし」

「男の子っていいわねぇ。そんなに食べてくれたら作る方も気持ちいいわ」

「でも朱里がうちに来ると、母さんは『女の子はいいねぇ』って言いますよ」

「そうだったの? 確かに燈真くんのとこは男兄弟だものね」

「母さん、女の子が欲しかったみたいなんですよ。だから、朱里が遊びに来るの結構喜んでます」

「本当。よかったわぁ」

「じゃあ昔須藤さんちに世話になった分、朱里にはどんどん遊びに行って返してもらわないとな」

「お父さん、それじゃあ向こうの世話が増えちゃうじゃない」

 あはは、と家中に笑い声が染み渡る。

 燈真が来ると、家族に笑いが増える。元々家族仲は良いが、彼はさらに味付けをしてくれるのだ。

 その後も賑やかに食事は進み、燈真は後片付けまで手伝っていた。

 片付けが一段落したところで、わたしたちは二階の自室に上がった。燈真は床のクッションに座り、わたしは勉強机の椅子に腰かけた。

「ふぅ、腹いっぱい。久しぶりに普通のカレー食べたなぁ」

「……いつもどんなカレー食べてるのよ」

「俺んちのカレー、毎回いろんなもの入ってるんだよ。朱里も食べたことあるだろ?」

「あぁ、夏野菜カレーとか、シーフードカレーね」

 言われてみれば、彼の家のカレーは随分具だくさんだったなと思い出す。

「うん、それはかなりマシな方かな。冷蔵庫に余ってる物とか、ネットで調べた隠し味とか母さんよく試すんだけどさ、これがまぁ失敗が多いの」

 先週は酷い味だったなーと、燈真はクツクツとおかしそうに笑った。

「だから今日のカレー、シンプル過ぎて逆にびっくりしちゃった。野菜は人参と玉ねぎとじゃがいもしか入ってないんだもん」

「ルーの箱に書いてある作り方そのまんまだからね」

「いつも、同じなの?」

「そうだよ。……燈真は、どっちが好き?」

「うーん。シンプルなのは面白みがないけど、絶対失敗しないのがいいところだよな。今日のカレー、すごく美味しかったし。でも母さんのカレーも、次は何だろうって楽しみもあって、不味い不味いって言いながら食べるのもなんだかんだ楽しいんだよなぁ」

「ふぅん。……わたしは、きっと一人暮らしを始めても、結婚して子供が生まれても、シンプルなのを作り続けると思う。失敗したくないから」

「俺は、奥さんと相談しながら一緒に作ってみたいな。次はこれ入れてみようぜ、とかさ」

「うん、いいんじゃない? 楽しそう」

 想像してしまったのはキッチンに並ぶ燈真と春菜ちゃんで、全く不愉快だが相槌を打っておく。きっと燈真も今、春菜ちゃんを思い浮かべているのではないだろうか。頬が緩んでいた。

「で、今日来た用事は? 春菜ちゃんのこと?」

 そろそろ本題に入ろうと問いかけると、彼はむくりと上半身を起こした。

「うん。俺、告白したよ。今日の昼休み」

 彼の表情はやけに穏やかだった。

「そう。……頑張ったね」

「それで、佐川さんに『考えさせてほしい』って言われた」

「そっか」

 ゆっくり、息を吐く。

 あぁ、わたし、ほっとしているんだ。学校での彼と春菜ちゃんの様子から、もしかしたら既に付き合い始めたかもしれない、と不安だったから。

「……どう思う?」

 燈真は、そこで初めて顔を曇らせた。

「それってさ、付き合えないけどうまく断れないから保留にされたのかな。付きあってもいいなら、その場でオーケーするよな」

「……それは、わかんないよ。保留するのも、いろいろあると思うし」

「例えば?」

「うーん……、他にも気になる人がいて、自分の気持ちを確かめたい、とか。あとは燈真の気持ちが本気かどうか測りかねている、とかかな」

 簡単に振るのはもったいないからとりあえずキープしてるんじゃない? なんて言い方をしたら、燈真は嫌な気持ちになるだろうな。

「俺、希望持っててもいいかな」

 当たり前じゃん、頑張りなよ。そう言おうとした言葉は喉でつっかえ、声にならなかった。燈真はわたしの返事がないことなんて気にする様子も見せず、「明日からどんな顔して会えばいいんだ……」と頭を抱えていた。

「別に、いつも通りでいいんじゃないの?」

「そうだよな……、いつも通り……、いつも通りってどんなんだよ……」

 再び頭を抱える燈真。考えれば考えるほどわからなくなるやつだろうなぁ。あぁ、面倒くさい。

「朝は普通におはようって挨拶して、数学の宿題の最後の問題でも教えてもらったら。春菜ちゃん確か数学得意でしょ」

「待って、なんで俺が宿題解けてないこと知ってんの」

「燈真の頭で解ける問題じゃなかったから」

「お見通しかよ」

 燈真はプッと吹き出した。ちょっと、表情がほぐれてきたみたいだ。

 『頑張れ』って言いたい。『きっと大丈夫だよ』って。燈真を応援したいからじゃない。わたしは燈真の味方だよってアピールするためだ。応援できるほど心は広くなく、頑丈でもない。それなのに表面上の言葉だけで寄り添ったって、燈真の力にはなれないし彼がわたしに振り向いてくれることもない。そんなことしたって意味ないってちゃんとわかってる。今、わたしは燈真に言葉をかける資格なんてないんだ。この心の中の薄汚い部分が抹消されるまで、燈真の横に対等に並ぶことができない。

「朱里、今日も話聞いてくれてありがとな。まだ諦めないで頑張ってみるよ。また相談するからよろしく」

 燈真は散々わたしにいろんな意見を求め、家に帰っていった。今日は、本棚の漫画には一度も目をくれなかった。



「それにしても、燈真はちょっと見ない間に本当に大きくなっあなぁ」

 燈真が帰ると、リビングでお父さんはしみじみと呟いた。なんだか嬉しそうな表情だ。わたしたちが幼く、今よりもっと家族ぐるみの交流が盛んだった頃、お父さんは燈真のことも息子のように扱っていた。

「お風呂お先にありがと。次はお父さん入る?」

「あぁ、じゃあ先にいただこうかな」

 お父さんと入れ違いに、お風呂上りのお母さんがリビングに入ってくる。自室に戻ろうとしたわたしを、椅子に腰かけたお母さんは「ねぇ朱里」と呼び止めた。彼女の対面に腰掛け、「何?」と話を促す。

「ちょっと気になったんだけどね……、燈真くんって今でもよくうちに遊びに来てるの?」

「うん、お母さんたちが帰ってくる前とか結構来てるけど……。迷惑だった?」

 まだ子供扱いされる立場とはいえ、わたしたちはもう中学三年生だ。お母さんにとっても、燈真は他人で一人の異性となってくるだろう。そんな人間が頻繁に我が家を出入りしているとなれば、不快に思ったって仕方ないかもしれない。

 しかし、お母さんは首を横に振った。

「迷惑なんて思ってないよ。燈真くんは昔と変わらずいい子だし、信用している。そうじゃなくてね……」

 お母さんは言いづらそうに目を反らした。

「あなたたち、付き合っているの?」

「……そんなわけないよ」

「そう……。もし付き合っているなら別にいいかなって思ってたんだけど……、朱里、ちょっと燈真くんと仲良くし過ぎなんじゃない?」

「……どういう意味?」

 自分でも驚く程、低くて攻撃的な声だった。親にこんな態度を取るのは、めったにないことだ。お母さんは困ったような顔をしつつ、続けた。

「仲良くすることは別にいいの。だけど、あなたたちだってもう年頃の男女なわけじゃない。今みたいに頻繁に家で二人きりっていう状況になるのは、あまり良くないと思うの」

 彼女の言葉に、プチンと、わたしの中で細い糸が切れる。

「何? わたしたちが“間違い”を起こすとでも思ってるの? それとも、燈真がわたしを襲うとでも? さっきは燈真を信用してるって言ったくせに?」

 お母さんは否定も肯定もせず、ただ視線をテーブルに落とした。

 無性に腹が立ってきた。イライラする。お母さんが本当にそう思っているのなら、それは燈真への侮辱と同等だ。だけどわたしがイライラしているのは、燈真を侮辱されたことでも、わたしたちの関係を変に疑われたことでもない。

「そんなの、余計なお世話だから。わたしと燈真がどうこうなるとか、ありえないから。絶対、ないから」

 そう、ありえないんだ。だって、燈真には好きな人がいる。幼い頃からずっと一緒にいたのに、彼はわたしを好きにはならないのだ。それならば、彼がわたしを求める日はきっと永遠に訪れない。

 さっきからイライラしている一番の理由は、きっとこれだ。

「あのね、小さな頃から一緒にいるけど、燈真くんも男の子なのよ」

「わかってるよ」

 わかっている。だって、わたしは彼を好きなんだから。

「お互い、この先もいい関係でいるためにも、適度な距離感って必要だと思うの」

「……」

「距離が近すぎるせいで、崩れてしまう関係だってあるのよ。あなたたちにはいつまでも仲良しでいてほしいし、なにより朱里がつらい思いをしないでほしい」

 何か言い返そうと開きかけた口を閉じる。お母さんはお母さんなりに、わたしの心配をしているのだ。それは、なんとなく理解できる。

「わかったよ」

 しぶしぶ頷くと、お母さんはホッとしたように顔を緩めた。

「もし二人が付き合うことがあれば、お母さんは大歓迎だからね!」

 でも素直になれないわたしは、無神経に笑顔を見せるお母さんに不快感しか抱けない。

「だからさぁ、それは絶対ないんだって」

「どうして? そんなのわからないじゃない」 

「……燈真、もうすぐ彼女できそうだし」

「あら、そうなの……」

 お母さんは、ちょっと残念そうに眉尻を下げた。

「それなら、尚のこと距離感を大切にしなくちゃね」

 




 それから数日、燈真は進展なく過ごしているらしい。春菜ちゃんとは告白について触れることはなく、どことなく気まずく、だけど他愛ない会話をしているとか。

 燈馬は毎日毎日、こんな話をしたとか、どんな反応をされたとか報告をくれる。わたしは女友だちとだってそんな話しないのに。正直、聞きたくない。

 お母さんから言われた、距離感のことを思い出す。お母さんが心配しているそれとはまた違うけど、今この気持ちのまま燈馬の傍にいるのはとてもしんどい。

 離れたい。

 それは、燈真と出会って初めて抱く感情だった。



「なぁ聞いてくれよ。今朝、佐川さんからおはよって挨拶してくれたんだぜ」

「……え、まだそんな状況なの。嘘でしょ」

「まだってなんだよ。いやー、今まで俺から話しかけ過ぎてたからさ、たまに向こうから話しかけてくれるとめちゃくちゃ嬉しいんだよね」

 彼はまた、放課後わたしの部屋に来て漫画を読んでくつろいでいく。

 こんなふうにデレデレしている燈真をわたしは知らない。今後彼女ができたら、燈真はその子の前でどんな顔をするのだろう。わたしには見せたことのない表情、声色があるだろう。そして彼の手は、わたしに触れるときとは違う優しさと力強さで彼女に触れるのだ。わたしは一生知ることができない。こんなに傍にいて、たくさん会話を交わして、それでも踏み入ることのできない一線が張られている。

 辛い。辛いなぁ。もう、嫌だよ。

 離れた方がいいんだ。離れたら、きっと苦しみも減る。

 いい加減、一歩下がろう。……いや、違う。前に踏み出すんだ。

「あのさ、燈真……」

 声が震える。燈真は「ん? なに?」と間延びした声で返事した。

「あの、いきなりごめん。燈真のこと応援するつもりでいたんだけど、なんだか最近そういう気分になれないっていうか……、その、春菜ちゃんとうまくいってる話とかあまり聞きたくないの……」

 手元のボールペンを握りしめた拳が、非力で情けない。燈真の表情を伺うこともできない。

「朱里? 何かあったか? 失恋でもした?」

 怪訝そうな燈真の問いかけに、何も答えられない。そうだよ。失恋だよ。その通りだよ。

 燈真は何か察したのか、深く追及してこなかった。だけどきっと、彼が察した内容は間違っている。

「……わかったよ。今まで嫌な思いさせてたんだな、ごめん」

 燈真に謝らせたくはない。わたしは首を横に振った。

「何があったか知らないけど……、朱里、今は話したくないかもしれないけど、いつでも相談は乗るからな。話してスッキリするんなら、愚痴だっていくらでも聞く」

 そっと顔を上げれば、燈真はさっきとは全く違う表情でわたしを見つめていた。

 燈真。あなたがわたしのことを大切に想ってくれているのはわかってる。それはきっと自惚れじゃない。わたしたちは十分な時間を共有し、確かな信頼関係を築いてきた。あなたのその気持ちが嬉しくて、だけどそれはわたしが望むものとは違う。燈真のわたしに対する優しさも、今はいらいない。

「うん。……ごめんね」

「謝るなよ。俺たち気心知れた仲なんだから、遠慮とかやめようぜ」

「うん、そうだね」

 それは無理だよ。気心は知れても、『心』はわからないでしょう?

 燈真は何事もなかったかのように「この間借りた漫画さぁ」と話題を変え、お母さんが帰ってくる前に自宅に戻って行った。


 結局その日、親のいない時間に家に来ないで、とは言えなかった。わたしは怖いんだ。燈真の傍にいるのは自傷行為のようなものだ。だけど、本当は彼から離れたくない。いつまでも隣にいたい。そんな気持ちが強く残っていて、傷つきながらも彼にすがっている。いつか彼の想いがすべてわたしに注がれる日が来ると、バカみたいに希望を捨てきれずにいる。

 しかし、その日を境に燈真がわたしの家に来ることはなくなった。彼の態度は変わらない。顔を合わせれば挨拶するし、時間が重なれば並んで登下校することもある。それでも、携帯の着信履歴から燈真の名前は減っていく。

 何かが違うようで違わない、曖昧な日常が続いたある日の夕方、燈真から着信があった。

 空は厚い雲で覆われ、テレビの天気予報はまもなく夕立が来るであろうと告げていた。

「朱里には話すべきか迷ったんだけど、でもちゃんと報告しておきたくて」

 その前置きで、電話の用件は察してしまった。予想通り、春菜ちゃんと付き合うことになったという報告だった。

 案外、ショックは小さかった。こうなることの覚悟はできていた。

「おめでとう」

 電話越しに笑顔を作ってそう伝える。大丈夫、ちゃんと明るい声を出せている。

「ありがとう」

 嬉しそうな燈真の声は、なんだか遠くに聞こえた。聞きたくないと思ってしまったからだろうか。

「あ、そうそう、それでさ、報告ついでに話したいことがあって」

「うん、何?」

「俺、今まで朱里の家に頻繁に上がり込んでただろ? これからはちょっと控えようと思うんだ」

「……」

 息が詰まった。それは、わたしから話そうと思っていたことだ。

「今さら朱里のこと女子として見るとかねぇけどさ、でも佐川さん、朱里のこと気にしてるっぽいんだよ。やっと付き合えたのに余計な心配かけたくないし、朱里にも嫌な思いとかさせたくないしさ」

「……うん」

「よそよそしくしようってわけじゃないんだ。なんていうか、距離感? 俺たち、今までちょっと近すぎたのかなーって思うんだ。俺と朱里の二人だけの問題ならそれでいいんだけど、でもこれからはそういうわけにもいかなくなってくるし」

 距離感って、燈真もお母さんと同じこと言うんだね。

「……そうだね。燈真は、これからは春菜ちゃんのことを一番大切にしなきゃだもんね」

「へへ、そういうこと。それから、誕生日のプレゼント交換も今年で最後にしない?」

 後頭部を殴打されたような衝撃に、本当に目眩がした。

 何か、根拠があったわけじゃない。だけどわたしは、燈真の方から離れていくことなんて考えてもみなかったんだ。わたしから働きかけない限り、二人の関係性は何も変わらないとたかをくくっていた。

 燈真の優先順位は、わたしより春菜ちゃんが上だ。そんな当たり前のことに、今やっと気づけた。ずっと隣を歩いていると思い込んでいた燈真はもう違う道を選んでいて、わたしの知らないところで悩み、考え、決断している。何か行動する前には必ずわたしに相談し意見を求めていた彼は、もういない。

 変わっていないのは、わたしだけ。燈真から離れようって一歩踏み出したつもりが、その場で足踏みしていただけだった。

 それから電話を切るまでの間、彼と何を話したのかよく覚えていない。最後に「じゃあ、また明日な」と言った彼の声は、わたしの気持ちとは裏腹に弾んでいた。




 失恋を経験した人は世の中にいくらでもいるわけで。わたしが今抱いているこの感情は、別段珍しいものでもなんでもない。

 だけど、わたしはこの感情の対処方法を知らない。棘がたくさん刺さってひび割れて、触ったら傷つき壊れてしまいそうな得体の知れないこの心を、どうすることもできずにそっと抱え込んでいる。

 どうしたらいい? どうしたら、壊さずに棘だけ抜ける?

 

 雨足が強くなる。両親の帰宅を待つ時間が孤独で寂しいと感じるのはいつものこと。

 わたしと燈真の関係は変わった。どんなに一人が寂しくても、もう、彼は来てくれない。かつて弟の誕生日会の迎えに来てくれた燈真は、いずれ思い出の中だけの存在となるだろう。だけど、あの時の光はわたしだけのものだって、お願い、それだけは否定しないで。


 

 大切な人の幸せを願える人間でありたい。自分の幸せよりも、彼の幸せを優先できる人間でありたい。決して決して、燈真と春菜ちゃんの破局を願ったりなんてしたくない。

 そんな綺麗事を、数日前から考えていた。美しい自己犠牲の精神を持ち、逆境にも凛とした姿勢で立ち向かう。それこそがヒロイン。人知れず涙を流すわたしに、きっと誰かが気づいてくれる。

 だけどこれは少女漫画じゃない。現実だ。用意されたハッピーエンドなんてない。脇役と思われていたキャラが唐突に現れて、救いの手を差し伸べてくれることもない。わたしはこの身一つで明日も歩んでいくしかない。

 それならばわたしは、自分を殺して聖人になることなんてできない。自分が報われない人生なんて、くそ食らえ。

 春菜ちゃんなんて、ずっと告白の返事保留にしてたくせに。燈真のこと、好きじゃなかったからすぐには付き合わなかったんでしょ? よくも、燈真のことをもてあそぶような真似をして。……燈真の気持ちが本気だったからこそ適当に答えたくなかったなんて、そんな言い訳絶対に聞かないんだから。わたしの人生というストーリーにぽっと現れて、大切な人をかっさらっていかないでよ。最低。大嫌いだ。

 さっさと別れてしまえばいい。付き合ってみて、やっぱり違ったって思えばいい。ねぇ燈真、幸せになるなら、わたしの隣を選んでよ。あなたのことを一番よくわかっているのはわたしだって、早く気づいてよ。


 溢れ出る自分本意の醜い感情は留まることを知らない。理想のヒロインから、どんどん遠ざかっていく。これじゃあ、ただの嫌われ役だ。

 自分がこんなに汚いなんて、知らなかったよ。知りたくなかったよ。



 翌日、朝から相変わらず燈真と春菜ちゃんは仲良さげに話していて。でも、二人の関係は昨日までと違う。友達から曖昧で中途半端な関係になり、そして今では恋人同士だ。付き合い始めたことはまだ周囲に知らせていないのか、彼らに好奇の視線を向ける者も、囃し立てる者もいない。完全に二人だけの世界を作り上げている。

 春菜ちゃん、なんでそこにいるの。そこはわたしの居場所になるはずだったのに。どいて。早く消えてよ。……死んじゃえばいいのに。

 そうだ。みんな死ねばいいんだ。わたしと燈真以外、みんな。いいや、どうせこの世で結ばれないのなら、わたしも死んだっていい。

 握りしめた拳の中で、爪が掌に刺さる。せめて、この痛みが心を浄化してくれたらいいのに。爪が刺さって破れた皮膚から滲み出してくるのは、汚れ悪臭を放つヘドロ。そのヘドロはわたしの身体の表面を伝いさらにキツい臭いを放つ。

 一限のために用意した数学の教科書が歪む。涙が綺麗だなんて、誰が言った? 心が綺麗な人の涙はそりゃ美しいさ。だけど、心の汚い人の涙なんて老廃物を含んだただの塩水だ。その汚い涙を流すんじゃない。現状に満足できないくせに何も行動に移さず、指をくわえてじっとしていることしかできなかったおまえに泣く権利なんてないからな。泣いたところで、誰かが寄り添ってくれることもないんだからな。ただ惨めになるだけだって、ちゃんとわかっているよな?


 変わりたかった。変われなかった。こんな後悔を、人生であと何度繰り返すのだろう。


 くそ。くそ。ちくしょう。


 死ね。


 みんな死ね。

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ヒロインになりたくて なしもと @misamisa245

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