第229話 キラリ先輩とお豆腐子ネコー
もっふるもっふると尻尾は揺れて。
カッチコッチと子ネコーの頭はハテナを刻む。
ハテナを訴える子ネコーメトロノームへの解説役は、先輩ネコーとしてキラリが買って出た。
「えっと、あのね。ま、魔法石は、魔法の力が、宿った、石、なの。だ、だから、キレイなだけじゃ、なくて、その。い、いろいろな、使い道が、あって。そ、その、魔除け、とか。リラックス…………え、えと、持ってるだけで、気持ちが、落ち着く、とか。よく、眠れるようになる、とか。悪い夢を、見なくなる、とか。あ、青猫号の、ク、クルーのお仕事用、だと、魔獣の、魔法から、守ってくれる、とか」
「ほうほう、ほほほぅ。まほーの、いりょいりょら…………。ゆめのまほーに、まじゅーきゃら、みんにゃをまもりゅまほーまれ…………。しょれは、しゅろいねぇ。ありあちゃいねぇ。しょれれ、おいしいゆめをみれる、まひょーしぇきも、ちゅくれりゅの?」
子ネコーメトロノームは、ただのお豆腐子ネコーになった。
キラリのお話は、ちゃんと理解できたようだが、その興味はお豆腐の方へ逸れている。
キラリは、にゃんごろーのお豆腐を真正面から受け止め、脱線気味に説明を続けた。
「え? お、おとうふの夢になるかは、分からないけど。い、いい夢が見られる、魔法石なら、あ、あるよ? にゃ、にゃんごろーが使えば、お、おとうふの夢に、なるかも。う、うちのお店にも、う、売っているよ?」
「ほほほほぅ!」
にゃんごろーのお目目がギラリと光った。ついでに口元もキラッと光っている。にゃんごろーの興味は、完全に豆腐方面へチェンジしていた。
まだまだ、にゃんごろー歴の浅いキラリは、そのギラつきがお豆腐魂によるものとは思わず、魔法石へ向けたものだと解釈した。
キラリは、お豆腐成分をバッサリと切り捨て、お話を本筋へと戻した。
「そ、それでね。ま、魔法石の作り方は、大きく分けて、ふ、二つあるの」
「ほっほほぅ?」
キラリの言葉にお豆腐成分は含まれていなかったが、にゃんごろーはお目目にギラつきを宿したまま、お口の中に溜まった涎をゴックンした。もしかしたら、美味しい作り方と美味しくない作り方の二つに分かれるのだと勘違いをしているのかもしれない。
「ひ、一つは、最初から、使い道が、決まっている、魔法石。そういう時は、材料も、それに合わせて、選ぶの。いい夢用の魔法石、なら、夢とか、心とかに、作用、んと、影響、んーと、関係する、魔法の力を、元々、持っている、材料、とか」
「ほほ…………う?」
にゃんごろーがお首を傾げた。お目目のギラつきは消え、再びハテナが宿っている。
メトロノームが再開しそうなことに気づいて、キラリは焦って尻尾をパタつかせた。にゃんごろーが一番興味を示した持った使い道を題材にして、なるべく簡単に説明したつもりだったのだが、にゃんごろーには難しかったようだ。
「え、と、その、だから、あの…………あ!」
キラリのパタパタ尻尾が、パタッと止まった。
良い解決策を思いついたのだ。
「つ、つまり、ね。さっき、にゃんごろーが、か、貝がらを、選んだ時、みたいに、ね? 美味しい夢が見たければ、美味しい貝がら…………美味しい貝が住んでいた、貝がらを材料にすれば、いいってこと」
「ほっほほう! にゃるほろ、にゃるほろ!」
キラリのパタパタを止めたのは、お豆腐好きの子ネコーに分からせるためには、お豆腐をまぶしてやればいいという、古来より使い古されている、とても簡単な方法だった。
そして、簡単な方法だからこそ、素直で単純な子ネコーは、あっさりと引っかかった。
とてもいい食いつきっぷりだった。
お豆腐子ネコーのお目目には、再びお豆腐なギラメキが宿っている。
もふもふお手々の中の巻貝に、お豆腐な雫が滴り落ちた。
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