戸惑い

「………可愛い、な」

「でしょ?」

 さっきまでいた洸ちゃんのことを言ってるのかと思えば…。

「自分で言う?」

こうちゃんのことじゃないの?」

「は?」

 何で?って顔で、私の顎をグイッと…。

あんちゃんのことに決まってるでしょ」

「は?」

 逆に何で?って顔して、後東ごとうさんの顎をお触りした。

「無精ヒゲ、何とかしてください。ヒゲ剃りありますか?」

「もう少し優しく言ってくれない?」

「そうですね…」

 今、彼氏設定だから甘めに言えばいいのかな…。

「イチさん、そのヒゲも素敵ですけど、整えた方がもっと素敵ですよ」

河崎かわさきのイチさん呼び、いいねぇ」

「変なスイッチ、入れないでください」

「入れたのは、そっちでしょ?」

「とっとと剃って来てください」

 隣は床屋なので、と隣の理容店を指差した。

「ヒゲ剃り持って来たから、剃るよ…」

「そう、ですか…」

「元々、現地に着いてから剃るつもりだったし…」

「すみません…」

「仮とは言えど、杏ちゃんの彼氏で婚約者ですからね」

 謝るな。河崎が悪くない。と呟いて、

「杏ちゃんは俺でいいの?」

「え?」

 突然、何を言い出すかと思えば、今更の確認で思わず変な声が出てしまった。

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