漏洩

「とりあえず、あんずちゃんのご両親には誤解が解けそうだね…」

「そう、ですね…」

 一件落着しそうだ…。よかった。よかった…。

「そう言えば、こうと一緒じゃなかったんだね…」

「と、おっしゃいますと…?」

 何か嫌な予感しかしない…。

「今日、帰って来るって…」

 タイミング良く、玄関の引き戸が勢いよく開いた音が聞こえた…。

「ただいまっ」

 そして、洸ちゃんの声がした。

「おかえり…」

「お邪魔してます…」

 リビングにいる私を見るなり、目の色が変わった…気がした。

「あんずさんだっ」

「お触り禁止」

 私に抱きつこうとした洸ちゃんは、ジュンさんに阻止された。

「あんずちゃんの両親に謝ったよ」

「え…?」

 何のこと?って顔して、洸ちゃんは思い出した顔をする。

「あんずさんと俺が結婚前提でお付き合いしているってこと…?」

 ジュンさんは頷いて、

「それと、今、あんずちゃんは結婚前提にお付き合いしているヒトがいるとも言いました」

 そ、そうなんだ…。

「いるの…?」

 洸ちゃんはそう言うと安堵した私に向かって、鋭い眼光で睨む…。

「い、いるよ…」

 多分、ジュンさんのハッタリで今、話が進んでいる…。事実はまだ、私の両親には伝わってない…。筈。

「嘘だ…」

「嘘じゃない。事実だ」

 ジュンさんが洸ちゃんをたしなめて、私を優しく見つめる。

「じゃあ、あんずちゃんを送って行くよ…」

「俺がっ…」

「来なくていい」

 ジュンさん、そんなに冷たくしなくても…。

「優しくしたら、また誤解されるよ…?」

 ジュンさんに耳元で囁かれて、肩に手を回されて、玄関まで誘導される。

「じゃあ、行って来まぁーす」

「お邪魔しました…」

 顔は見えないけれど、洸ちゃんのいってらっしゃいは不貞腐れて言っているようだった…。

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