逃げ出したい

「枯れ過ぎでしょっ」

「そうなんだよ。こんな枯れた女にしたのは…」

「私のせいです…」

 何故か三者面談のようになってしまっているこの状況から、逃げ出したい…。両サイドにいるので、逃げ出したくても逃げ出せない。

「違うよ…」

「うん。河崎かわさきのせいじゃない…」

 そう言って、二人とも私の手を握り、

「でも、今、目の前にいる彼を捕まえなくてどうするの…?」

「俺を捕まえてくれてもいいんだぞ…?」

 そう言って、後東ごとうさんは私の肩に頭を乗せる。

「慎んでお断りいたします」

 笑顔で、後東さんの顔を丁重に退けた。

「彼は、そういうヒトじゃないんです」

 もう…。そういうんじゃないんだから…。

「でも、楽しそうにメールしてたじゃない…?」

「そりゃあ、無条件に可愛い存在ですから…」

 自分のこどものような…。

「すごいノロケだねぇ…?」

「ノロケというよりも、親バカか…?」

 林檎りんごさんがそう呟くと、後東さんは目を見開く。

「そうかっ」

 何かを解決した後東さんは事務所から出て行った…。

「だからって、イチには興味ないぞぉーって、聞いてないな…」

 林檎さんは溜め息を吐いて、

「めげないところがイチのいいところだねっ」

「ですね…」

「じゃあ、モモには無条件に可愛い存在だから手を出すんじゃないって言っておくよ…」

 林檎さんがどこまで知っているのか知らないけど、全て見透かされているようで、少し目を見開いてしまった…。少しの変化も見逃さない林檎さんは、

「今回、後東が昇格したのはハジメの為だから…」

 ニヤッと笑って、

「モモにそんな力ないよっ」

 そして、

「私が本気出せば、何とでもなるから…」

 耳元で囁く林檎さんの声は、

「後東のことは気にしなくていいよ…」

 言葉とはうらはらに冷たかった…。

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