緊急事態

「もう…」

 出社してすぐ、後東ごとうさんにムスッとされる…。

「おはようございます」

 素知らぬ顔をして、後東さんの前を通り過ぎようとしたら、

「おはよう…」

 元気なく挨拶され、深い溜め息を吐かれた。

河崎かわさきちゃん…」

 ボロボロの白坂しらさかさんがいて、

「俺、どうしよう…」

 思いっきり抱きつかれた…。

「痛い…」

 上司がいるんだから、上司に相談しましたよね…?

「一体、何があったんですか…」

 いつもより早めに出社したので、この事務所にはまだ三人しかいない…。

「河崎ちゃんが後東に預けてた下着を一時預かりで家に持ち帰ったら無くなっちゃって…」

 はい…?

「奥様が処分したのでは…?」

「うん…」

 ごめんなさい…。と、謝る白坂さんを疑問に思うことが…。

「後東さんが、何で持ち帰らなかったんですか…?」

 後東さんに投げ掛けて、

「最近よくハジメが遊びに来るから、預けたんだよ…」

 後東さんは不貞腐れて、デスクに俯せる…。

「俺だって、本当は持ち帰りたかったよ…」

 そんな姿を見て、

「無くなった下着のことで、こんな朝早くから呼び出されたってことはないですよね…?」

 そうなんだ…。

 二人して、それ以外に何があるの?って顔をしている…。

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