「乾杯っ」

「お疲れ様ですっ」

 家近くの居酒屋で、

「突然誘ったのに来ていただいて、ありがとうございました…」

 保志野ほしのくんがココで飲んでいると連絡があったので、立ち寄った。

「いやいや、帰り道だからねぇ」

 いやぁ、ビールが上手いっ

「やっぱり、あんずさんは笑ってる方がいいです…」

 そんなに、あの飲み会の時に険しい顔をして飲んでいたのだろうか…。

「そう…?」

 これから気を付けよう…。嫌な飲み会でも飲むことを楽しもう…。うん。そうしよう…。

「はいっ」

 やっぱり、保志野くんの笑顔は破滅的だ…。

こうちゃん、次…」

 何飲むの?と聞こうと近付いたら、

「あんずさん。もっと女性だって自覚してくださいよ…」

 さっき食べた焼き鳥のたれが口元に付いていたらしく、保志野くんが紙ナプキンで拭き取ろうとしたので、

「大丈夫。自分で…」

 奪おうと思ったら、その手を拒否された。

「無防備過ぎるよ…」

 拭き取ってくれた保志野くんは、その拭き取った紙ナプキンを折り畳みながら、

「あんずさん、本当に彼氏いるの…?」

 今、一番言われたくないことを言われて軽く傷付きました…。

「今は、いないよ…」

 ビール美味しいな…。って思って、さっき言われたことは忘れよう…。

「そうなんだ…」

 何で、そこで笑うんだよっ

「そういう洸ちゃんは、いるの…?」

 不貞腐れながら、ビールを飲み干して再びビールを頼んだ。

「いませんよ…」

 だから、何で笑ってるんだよ…。

「だから、誘ったんですよ…」

 その意味が全くわからないので、そんな顔をしていたのだろうか。保志野くんは、

「あんずさん、俺も男ですから…」

 少し笑って、

「下心ありきでお誘いしてますよ…?」

 私のココロがほんの少しだけ揺れた気がした…。

「そう…?」

 私は枝豆を食べながら、おしながきを熟読する…。

「そうですよ…」

 やっぱり、たこわさ頼もう…。

「そっか…」

 今は、まだ誰とも付き合いたくないや…。あれ…?何で、保志野くんと付き合うことを考えてしまったのだろうか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る