所在不明

河崎かわさきさん、はい。お土産っ」

 志波しばくんが手渡してくれたのは、以前私がまた食べたいと言っていたお菓子だった…。

「ありがとう…」

 近場で打ち合わせが多い志波くんは、美味しいものがあれば買って来てくれて、

「いっぱい食べて、ツラいことは忘れましょうっ」

 ここのところ、志波くんが買って来る美味しいお菓子で私のココロは満たされている…。ありがとう…。そして、美味しい…。

「美味しいよ…」

 お土産と言えば…。何か…。何か引っかかっていることが…。

「あっ…」

 思い出した…。

 後東ごとうさんの引き出しに入れっぱなしの私には似合わない下着の数々を引き取らなきゃいけないことをすっかり忘れていた…。

「河崎さん、ブラックコーヒーでよかったですかぁ?」

 どうやら志波くんは自販機の前にいるらしい…。ってことは、今、私以外は誰もいない…。

「はいっ」

 さて、今のうちに引き取りに行こうと後東さんの席に移動して、一番下の引きだしを開けると、

「ない…」

 キレイになくなっていた…。例の下着たちはどこへ行ったのか…。

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