用件(2)

「じゃあ、コレは後東ごとうさんに…」

 明らかに着用しないお土産の品は、後東さんにお渡ししている。

「そろそろ持ち帰らないと…」

 そう言って、後東さんが一番下の引き出しを開けると、私の渡した品々が無造作に入っていて溢れそうだった…。

「いや、私が持ち帰りますっ」

 このままだと後東さんが変態だと勘違いされる…。今日貰った少々大きめの袋に詰め込もうと思い、移動しようとしたら、

「それだと、俺に見せてくれないでしょ…?」

 後東さんに腕を掴まれて、

「見せませんけど…?」

 真剣な顔をしていたので、真剣に答えを返した。

「相手が後東所長って限らないでしょ…」

 白坂しらさかさんがいつの間にか後ろにいた。

「例えば、俺とか…?」

 一瞬、空調の音が聞こえるくらい静まり返った…。

「ない」

「ない…」

 後東さんと同調してしまった…。

「既婚者でしょうがっ」

 隣で違う世界から戻って来た黒崎くろさきくんに肩をパシッと叩かれていた…。

「い、痛い…」

 白坂さんは叩かれてない胸元を押さえながら、

「見るくらいいいじゃない…」

「よくないっ」

 私が言う前に、後東所長が言った…。

「俺のもの、なのっ」

「違います…」

 肩に乗った後東所長の手を払い除けて、自分の席に戻った…。

「かっこいいですっ」

 隣の席の黒崎くんは目をウルウルさせながら、私を自然にハグして、

「河崎さん、好きですっ」

 あぁ、視線が痛い…。上座の方からひしひしと…。

「黒崎の査定の悪さって、こういうところだと思うんだけどな…」

 私の真向かいの席の波須はすくんはそう呟いて、

「帰国子女だからストレートにしか言えない黒崎さんって罪ですよね…」

 その隣で溜め息を吐く志波しばくん。

「ある意味、羨ましい…」

 そう言ったのは、いつもストレートに言う後東さんだった。

「下心ないハグとか…」

 俺には無理だ。と言って、ヘッドホンをして仕事を始めた。

「文化の違いじゃないですか…?」

 黒崎くんはそう言って、席を立った。

佐脇さわき、お久しぶりっ」

 ちょうど館花たちばなさんと佐脇さんが出て来たところだった。

「お久しぶりです…」

「では、お邪魔しました…」

 館花さんは軽くお辞儀をして、あっさり去って行った…。

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