修羅場

 保志野ほしのくんは、私の幼馴染みの子供で知り合いだったことを話して、解決した…。

「じゃあ、保志野くんとまた会えますかね…?」

 よっぽどのお気に入りか…。でも、ジュンさんの子供にこんなウワベだけ女子力高めのオバサンを紹介するのは、如何なものか…。

「どうかな…?」

 個人的には、会わせる気など毛頭ない。それが保志野くんでなくても。

「連絡先は教えてもらったんですけど、返事がなくて…」

 それでも諦めない貪欲さをもっと違うことに向ける気はないのだろうか…。

「押してダメなら引いて…って、はいっ」

 二人っきりの会議室に、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。

「失礼します…」

 中に入って来たのは、

佐脇さわきちゃんっ」

 黒ブチ眼鏡のふわっとショートヘアの二十代半ばの彼女は、昨日のドタキャン張本人で、

「昨日はごめんね…」

 館花たちばなさんに向かって優しく笑い、そのまま私を見て、

河崎かわさきさん、後東ごとう所長がお呼びです…」

「はい…」

 佐脇さんは私に向かって、軽くお辞儀をする。

「昨日はありがとうございました…」

「いえいえ、お気になさらず…」

 私は席を立ち、

「じゃあ、館花さん。お元気で」

 軽く手を振って、会議室を出た。

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