疑惑

「お持ち帰りしたの…?」

 朝の挨拶って、「おはようございます」では、ありませんでしたっけ…?

「してませんっ」

 ただ、一緒に帰っただけだよ…。

「じゃあ、これ虚偽だね…」

 後東ごとうさんの携帯端末で見るSNSには、

『ももちゃんのお気に入り、オバサンにお持ち帰りされちゃったよ…』

 明らかにこのオバサンを指すのは私か…。

「だね…」

 パッと見て愚痴しか書いてないようには見えた。詳細を読む気はない。彼女に興味がない…。

「もういいの…?」

「うん…」

 興味ない。と持ち主に携帯端末を返した。

「俺は河崎かわさきに興味あるから聞くけど、この彼とは一夜限りのあっさりした御関係なの…?」

 後東さん、本当に私が持ち帰ったと思ってない…?その顔…。

「ノーコメントです…」

 馬鹿馬鹿しい…。

 自分の席に歩き出したら、

「やっぱり、持ち帰ったんですね…」

 いつの間にか館花たちばなさんがいた。そう言えば、今日は残りの私物を取りに来るって言ってたな…。

「一緒に帰っただけだよ…」

 その言葉でどう引っかかったのか、今、私は彼女に胸ぐらを掴まれている…。

「館花ちゃん、そういうことはあちらでやろうか…?」

 朗らかに笑う後東さんの目が笑ってない…。

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