謝る

 お店を出てすぐに、隣を歩く保志野ほしのくんに向かい、深々と頭を下げて、

「ごめんなさいっ」

 顔を上げると、突然謝られて驚いているようだが。

こうちゃん、気付かなくてごめん…」

 そう付け足すと、保志野くんは少し笑って、

「あんずさん、気付かな過ぎでしょ…」

 先程から、保志野くんの携帯端末の着信が頻繁に鳴っている。軽く画面を見るもののすぐに画面から目を離しては私と会話をしている…。

「そういえば、連絡来てるけどいいの…?」

 保志野くんは何か操作をして、携帯端末をカバンの中へ放り込んだ。

「あぁ…、うん。さっきの連中からの連絡だからいいの…」

 俯きながら、

「そっか…」

 本当にいいのかな…。でも、それが最近の若者なのかと自問自答しているうち、駅付近までたどり着いてしまった…。

「私、帰るから。ここで…」

 軽く会釈して、駅までの道を一人で帰ろうとしたら、

「ま、待って…」

 腕を掴まれて、

「飲み直しませんか?」

 言われた場所とそのお店は、私の家に近くて思わず、

「いいよ…」

 と、言ってしまった…。

「よかったぁ…」

 保志野くんはグラッと揺れたので思わず手を差し出してしまった…。

「俺、結構酔ってて…」

 頭をよぎったのは、館花さんが何かを盛ったのでないかという疑惑…。いや、そういうコじゃないと思うよ。思いたいよ…。

「大丈夫…?」

 掴んでいるその手の力強さから足にきているのだろうと思い、近くにあるベンチに誘導して、座らせた…。

「何か買って来るよ…」

 座ってられないくらい飲んでいたのかベンチに座るなり横になってしまった…。

「すみません…」

 財布を渡そうとする保志野くんの手を止める。

「後でいいから」

 近くにあった自販機まで小走りして、買っている時に携帯端末の着信が鳴った…。

「水…。水…っと…」

 ミネラルウォーターを2本買って、保志野くんがいるベンチまで戻る間に、携帯端末を見ると、

河崎かわさきさん、今日はありがとうございました。帰る時に保志野くんと会いませんでしたか?』

 会いましたよ。そして、今、一緒に居ますが…。返事はせずにそのままポケットにしまい込んだ。

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