会合
「乾杯っ」
「はぁ…」
若いヒトに紛れて飲む酒は味がしない…。美味しくない…。こんなに不味いお酒はいつ以来かしら…。なんて物思いに耽っていると、視線を感じるのでそちらに目をやると、
「
隣にいる館花さんに、その視線を指摘されていた…。
「ん…?」
と言って、誤魔化しているものの、その視線は度々ある…。
「お手洗いに行って来ます…」
早めに逃げないと絶対、面倒なことが起きる。
「
隣にいる保志野くんに腕を絡ませながら指差しているところを見ると、多分、アレがお気に入りなんだろうと思う…。
「ありがとう…」
微笑んで、カバンを持って忘れ物がないかさりげなく確認してから、その場から離れた…。
「はぁ…」
しんどい…。
周りを見渡しながら、誰も気付いてないよな…っと、脱出成功…。
「よし…」
帰ろう。家に帰って飲み直そう…。
お手洗いの前を通過して、靴の収納箱から自分の靴を探すのに、もたついていたら、
「河崎さん、どこに行くんですか…?」
館花さんのお気に入りが、目の前にいる…。
「お手洗い…って、もう通過しちゃったか…」
笑って誤魔化して、お手洗いに行こうとしたら、
「帰りましょう」
腕を掴まれて、
「俺もお手洗いって言って、帰ろうかと思ってたんで…」
指を差して、
「これだと思いますよ…」
保志野くんは先程の緩やかな印象とは違い、ハッキリした意思があるヒトなのかな…。
「保志野くん、すごい…」
思わず、声に出てしまっていた…。
「俺の隣に置いてたじゃないですか…」
もしかして、意外と酔いが回っているのかも…。しっかりしなきゃ…。
「ありがとう…」
自分の靴を取り出そうとしたら、
「はい。どうぞ…」
私の靴を取り出して、地面に置いてくださっていた…。
「ありがとうございます…」
靴を履きながら、紳士な彼をじっくり見る…。
「途中まで送りますよ」
その笑顔に、見覚えがあった…。
「いえ、お構いなく…」
保志野と言えば、実家のご近所に住む三つ上のジュンさんのお子様ではないか…。
「お疲れ様でした…」
一気に酔いが醒めた…。
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