疎い

「反応、薄いよね…?」

 膝に手を置かれただけで恥ずかしがることなどあったのだろうか…。多分、好きなヒトにはそういう反応はあったと思うが、それももう遠い昔過ぎて憶えがない…。

「こんなことしたい為に、ご飯食べようって言ったんですか…?」

 溜め息を吐いて、膝に置かれた後東ごとうさんの手を退ける。

「いや、河崎かわさきと一緒にご飯が食べたかっただけだよ…」

 後東さんの夜ご飯とは、晩酌のことで、ほぼアルコールだけの…、って、あれ?今日は車で帰らないのかな…。それとも、代行運転かな…。どうでもいいけど…。

「勿論、下心はあるぞっ」

 再度、膝に手を置くのかと思えば、今度は後東さんの頭が直接乗っかる…。

「ヒトとして正常ではありますよね…」

 おしりに触れているその手を退けようと手を伸ばしたら、

「好意のある女性に触りたい。って思うのはごく普通な下心で…」

 逆に、後東さんに掴まってしまった…。

「河崎だけ、だよ…?」

 手に集中していたせいか、今、整った顔が目の前にある…。

「好意ないヒトにケツ触られても、私は嬉しくないですけどね…」

 後東さんは仕事では尊敬できるヒト。私生活は尊敬できない。関わりたくない…。

「はっきり言うよねぇ…」

 そう言って、後東さんはビールを飲み干した。

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