阻止

「では、帰りますね…」

 彼女の残務は一段落したので、ここらでお暇しよう…。

「ダメ」

 作業を終えていつもの席で寛ぐ後東ごとうさんは、いつの間にか私の近くにいて私のカバンを掴んで離さない…。帰れない…。

「帰りますっ」

 残業して仕事終わったのに帰れないって、ブラック企業かっ

「一緒に帰ろう…?」

 最初からそう言えばいいじゃないですか…。思わずため息が出てしまった…。

「帰りません…」

 だって、私は電車通勤。まだ、電車あるし…。

河崎かわさき、遅いから送るよ…」

「お構いなく」

 さっきからすごくおなかの虫が鳴ってますけど…。

「ご飯、食べに行きますか…?」

「うん…」

 私に寄り掛かり、

「後東さん…?」

 私の肩に手を置き、身を委ねて来たので押し倒されそうになるのを必死に密やかに阻止した。

「あぁ、おなかすいた…」

「ですねぇ…」

 早くご飯が食べたいよ…。

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