上司との残業(2)

「妬いてるの…?」

 その意外な言葉に、思わずデータを保存し損ねるところだった…。アブナイ…。アブナイ…。

「妬いてません…」

 少しずれた老眼鏡を直して、とりあえずデータを保存した…。

「安心して」

 ひょこっと顔を出す後東ごとうさんと目が合う。

「俺、河崎かわさきがいないと生きていけないから…」

 真剣な顔で、そんなこと言われたら冗談としか思えない…。

「仕事が終わらないから、でしょ…」

 後東さんが視界から見えないように書類の再確認をする…。

「うん。会社にも必要だけど俺にはもっと必要だよ…」

 後東さんとは、同期でこんなくだらないことを言い合える仲なだけ…。

「寝言は寝てから言いましょうねぇ」

 でも、くだらない雑談で気が紛れたので感謝の言葉をココロに秘める。言ったら、もっと褒めてって言いそう…。いや、絶対言うだろうな…。

「何だよ…」

 本気なのに。と終えた書類がこちらに戻って来る。

「後東さん、返されましても…」

 黙々と仕事をし始めた後東さんは、聞く耳持たず…。

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