第117話 久しぶりの冒険者ギルド

 久しぶりの都市ガイアスは王都とは異なり、普段と変わらない様子だった。


「じゃあ店の整理をしてくるのじゃ」

 メジストは都市ガイアスの店を閉店する準備を進めに行った。基本的に店の商品や中の棚など商売に必要なものを回収する程度だ。


「明日には出発するから今日はゆっくり休むんだよ」

 モーリンと俺達3人は明日ルーン街に行くことなっている。その後は俺達3人で俺の故郷に帰るつもりだ。


「2人は残った時間何したい?」


「んー、私はあそこに行きたい」


「オラも久しぶりに行きたい」


「ならその前に依頼を受けてから向かおうか」

 ある場所に向かうために俺達は冒険者ギルドに向かった。後ろをついて来ている2人はどこか首を傾げていた。


 久しぶりに来た冒険者ギルドは前と変わらない雰囲気を放っていた。いかにも装備が貧弱な俺達を見てポーターだと認識するのだ。


「おいおい、ちびっ子達が何のようだ?」


「にいちゃどうする?」


「んー、気にしなくていいよ」

 冒険者は俺達に喧嘩腰で絡んでくるのはギルドに入る前からわかっていた。


「おい、俺を誰だと思ってるんだ! Bランク冒険者のファ――」


「お兄ちゃんに汚い手で触れないで」

 男は俺の胸元を掴みかかったがその前にニアが魔法を発動させていた。


「ニアに先越されちゃったな」

 ロンも同じく槍を既に待ち構えている。


「おい、これなんだよ!」


「同じBランク冒険者なのにこれぐらいわからなくても大丈夫ですか?」

 口では心配しているがニアの魔法はさらに展開されていた。


「お前らがBランクのはずが――」


「ウォーレンさんお久しぶりです」

 声をかけて来たのは以前俺を見て接する態度を変えた冒険者ギルドのスタッフだった。


「お久しぶりです。 ここのギルドはまだこんな感じなんですね」


「ひぃぃ!? すぐに武器を下ろしなさい」

 ただ普通に話しただけなのにギルドスタッフは怯えていた。そんなに俺の顔が気持ち悪かったのだろうか。争いにならないように微笑んだだけなのに……。


 そしてギルドスタッフの声に反応して、数人の冒険者は武器を下ろした。


 きっと掴みかかった男と同じパーティーの冒険者なんだろう。


「ロンとニアもそれぐらいにしておいたら?」


「だってにいちゃを馬鹿にしたんだよ?」

「そうよ! 汚い手でお兄ちゃんを触って汚れたらどうするのよ?」


「ニッ……ニアちゃん?」

 どこか祝賀会パーティーに参加してからニアの強さが増していた。プリシラとずっと一緒にいたことで何か影響したのだろうか。


「俺は2人が悪く言われる方が辛いよ? 依頼を早く受けてあそこに行かないといけないしね」

 俺の言葉に納得したのか2人は落ち着いた。


 男は解放されるとその場で座り込みすぐに他の冒険者に回収されていた。


「あのー、それで何の依頼でしょうか?」

 申し訳なさそうに聞いてくるスタッフに俺は依頼掲示板から目的の依頼を外すと渡した。


「これでお願いします」


「本当にこんな依頼でいいんですか?」


「一応状況によってはCランクの依頼だからちょうどいいんじゃないですか?」

 依頼書には大きくCと表示されている。


「お伝えしにくいのですが、勇者パーティーにこちらの依頼を承諾することができないんです」


「えっ!?」

 まさかの対応に俺は驚いている。別にBランクの方が人数が多いため、下位の依頼を受けられると思ったのだ。


 そして同じようにギルド内にいた冒険者も驚いていた。


「やっぱりお兄ちゃん知らなかったんだね」


「お前ら知ってたのか?」

 俺の言葉に2人は頷いていた。だから冒険者ギルドに行くって話をした時に首を傾げていたのだろう。


「何か理由があってわざと依頼を受けるって言ったのかと思ってたよ?」

 本当に知らなかったのは俺だけだった。俺はため息をついていると突然ギルド内の冒険者は頭を下げてきた。


「先程は申し訳ありませんでした!」


「えっ?」

 その態度の変わりように逆にこっちが申し訳ないと感じた。


「勇者パーティーだとは知らずについ絡んでしまいました」


「ああ、それは別にいいよ」

 俺の言葉を聞いて冒険者達は息を大きく吐いた。


「ポーターだと見た目が弱そうだもんね。 ただこの2人を何かしたらただじゃすまないからね」

 一瞬でミスリルダガーを取り出し何回か振ると辺りで大きな音が聞こえてきた。


――ドン!ドンドン!



「じゃあ目的地に行こうか」

 俺達は目的地に向かって冒険者ギルドを後にした。


 ギルド内は顔面を真っ青にした冒険者達が座り込んでいた。俺は鎧の結び目を全て切り落としたのだ。これで実力がわかり絡むことはなくなるだろう。

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