第76話 大白金貨 ※一部ウィリアム視点

 俺達は宝物庫からアクセサリーをつけて外に出ると執事が待っていた。


「準備が整いましたので戻りましょうか」

 執事に案内されてさっきまでいた部屋に戻るとウィリアムが座って待っていた。


「いやいや、欲しいものはあったかな?」


「はい、ありがとうございます。 それにしても眩しいです」


「ん? 今はスキルを……ああこれのことか」

 ウィリアムはテーブルに布を被せると光は収まっていた。俺もスキルでウィリアムが光っていたと思ったがそうではなかったらしい。


「今からエヴァンとプリシラを助けてくれたお礼と金属の買い取りをさせてもらおうか」

 どうやらお礼はアクセサリーだけではなかったらしい。


「ここには大白金貨が置いてあるがこれで足りるかな?」

 ウィリアムはテーブルの布を外すとそこには白く輝いている硬貨が置いてあった。


 テーブルいっぱいに置かれた大白金貨はテーブルをミシミシと言わせている。一つでもかなりの重さになるが大白金貨が重なっているから変な音が鳴るのは仕方ないだろう。


「まずはエヴァンとプリシラの命を助けてくれたお礼に大白金貨1枚を渡そう」


「ありがとうござうおっととと」

 ウィリアムから渡された大白金貨は今まで持った物の中でも1番重く感じた。それだけお金の重要性を直で感じることができるのだ。


「ロンとニアも持ってみて」

 俺はロンとニアに渡すと2人とも楽しそうに持っていた。


「それで金属に関してだが魔剛アダマンタインは私でも見たことないスキル持ちの金属で値段がつけられないから今回は一つだけ預かってもいいかい?」


「大丈夫です」

 俺はとりあえずある程度売れれば問題ないため頷いた。


「次にこのミスリル、ヒヒイロカネ、アダマンタインを1セットで白金貨1枚でどうかな?」


「アダマタインはあまり数がないですがいいですか?」


「へぇ!?」

 俺は一つずつ出したがミスリルとヒヒイロカネに関してはたくさんあったことを忘れていた。


「ミスリルとヒヒイロカネに関しては――」


「ちょっとウォーレンくん待ってくれないか?」


「ああ、大丈夫ですよ」

 ウィリアムは一度考えると話し出した。


「流石にたくさん買い取るのは私達の生活に支障が出てくるが頑張れる範囲で問題はないか?」

 これ以上とはテーブルに置かれている大白金貨のことを言っているのだろう。


「特に問題はないですよ」


「なら少しずつ出してくれ」

 俺はウィリアムに言われたとおりにミスリルとヒヒイロカネを一つずつ取り出して半分程度渡した。


「あー、なんということだ。 こんなに伝説級の金属を大量に見るとは……。 これを見たらあいつも楽しく鍛冶が出来るだろうな」


「あいつとは?」


「あー、昔一緒にいた仲間がいたんだがな。 今はどこかで鍛冶屋をやっているはずだ」

 ウィリアムはどこか昔を思い出しているのか懐かしそうに金属を見ていた。


「話を戻すが大白金貨5枚で全ての金属の買い取りでいいかな? 魔剛アダマンタインに関しては一度値段がわかり次第買い取る形にしようか」


「うぇ!?」


「そんなに驚いてどうしたんだい?」

 大白金貨5枚って言えば単位に直すと50,000,000Gになるのだ。一生働かなくても良いほどのお金を俺は一瞬で手に入れたのだ。


「あまりの大金でどうしたらいいのかわからないです」


「滅多に大白金貨を手に入れることはないからね。 また何か買い取って貰えなくて困った時はエヴァンかプリシラを通して言ってもらえれば相談に乗ろう」

 まだアイテムボックスの中にはたくさんの金属が残っているが、お金があった分だけ使ってしまいそうな気がするため追加はせずに後日買い取ってもらうことにした。


 過去に一気に証券口座に入れて生活ギリギリになったことがあるしな。


 俺は証券口座に大白金貨を入れ城を後にした。色々なことがあった1日だったが充実した1日を過ごせたと思う。


 改めて俺は勇者にならないといけないと思わされる1日だった。





――コンコン!


 扉を叩く音ともに2人が扉の前で名乗っていた。


「大丈夫だ」


「殿下失礼します」


「ああ、君達か」


「先程は息子が申し訳ありませんでした」


「いやいや、ああなることは見てて分かったから大丈夫だよ」

 私の元に訪れたのはスペード公爵家とハート公爵家の次期公爵。正確に言えば今はアルジャン王国の騎士団長と魔法師団長だ。


「お互い馬鹿な子供を持つと大変なのはわかっているからな」

 公爵家は騎士家系のスペードとクラブ、魔法師家系のハートとダイヤで分かれている。なぜかスキルも引き継ぎこの勢力も変わらないのだ。


 公爵家は貴族の中で最上位でその上は王族だけのため昔から傲慢になることが多いのだ。その結果彼らの子供や私の息子のエヴァンのようになってしまう。


 まぁ、私の場合は過去にセリナという冒険者にボコボコにされた挙句、奴隷のように働かされたからその気持ちはどこへ行ってしまったがな。彼らもあの伝説の勇者に心を砕かれた世代だ。


「それで息子はどうだ?」


「これで少しは落ちつけばいいけどな」


「まぁ、そうだな。 みんなが謙虚であればいいんだかな……」

 俺達の子供は揃いも揃って歴代の中でも力が足りない子達だ。だからこそエヴァンを変えたウォーレンに賭けてみたのもあった。


 彼等には悪い気持ちにさせたがその分のお礼としてお金は払っておいた。あの金属には驚いたが実際に買い取るよりも色目をつけたからな。


「それにしてもウィリアム様はどうやってあのような若者を見つけたんですか? 急に私に鑑定を使ってきてびっくりしましたよ」


「あー、あの子はエヴァンとプリシラの命の恩人でな。 私のお気に入りでもあるんだよ」

 あんなに素直な子が息子であれば可愛いと思ったが、今じゃエヴァンらはあの子達に影響されているからな。


「ぜひ、うちの強情な娘にも合わせて見たいものだ」


「あー、それはやめた方がいいんじゃないか?」

 ハート公爵家の令嬢って言ったら魔法の暴君って言われているぐらいだからね。娘のプリシラなんて幼少期の頃から泣かされていたのはいい思い出だ。


「そうか……あの子も男なら生きやすかったんですけどね」


「彼女は才能がありすぎますからね」


「それでも自分の子供が可愛いのは同じだろ?」


「もちろんですとも。 あの子の火属性魔法に炙られても私は――」


 ああ、またハート公爵家の娘溺愛話が始まったな。

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