第75話 宝物庫
俺は連れられるまま部屋に案内された。どうやら今度はしっかりした部屋で人目がつかないようになっていた。
案内された椅子に座るとウィリアムは話し出した。
「先程はすまなかったね」
口では謝っているが謝る気はないのだろう。だって目の前にいるのにスキルを発動しているのだ。
「いや、もういいのでスキルを止めてください」
「ははは、やはりウォーレンくんは楽しいな」
俺は完璧にウィリアムのおもちゃ扱いになっているのだろう。
「それで来てもらったのは単純に息子と娘を助けてもらったお礼がしたかったんだ」
助けたというのはこの間スライムと戦った時のことを言っているのだろうか。
「それなら別――」
「せっかくだからもらっとけよな。 城には宝物庫もあるからな!」
「おおお、それは良いアイデアだね! この城の宝物庫から好きな物を一つずつ持っていくといい」
なんと宝物庫にある物から何かもらえることになった。俺としてはお金を貰えるたら問題ないんだが……。
「あっ、一つ頼みたいことがあるんですがいいですか?」
「叶えられることなら言ってみなさい」
俺はアイテムボックスからたくさん持ってる金属を一つずつ取り出した。
「なっ……なんだこれは!?」
「えーっと……金属ですかね?」
ウィリアムは取り出した金属を見て驚いていた。
「こんなに伝説級の金属をどこで手に入れたんだ」
次期国王であれば珍しい物を見ていると思ったがやはり中々見ることができない物らしい。
「エヴァンとプリシラが驚かないのは慣れたからかな」
「いや、呆れてるだけだからな?」
「えっ?」
「お前口に出てたぞ?」
どうやら思ったことが口に出ていたらしい。
「それでウォーレンはこれをどうしたいんだ?」
「実は珍しい物らしいから売ろうにも値段もわからないしお金が用意できないと言われてね」
俺が今までアイテムボックスに入れていたのは単純に売ることができなかったからだ。やっとちゃんとした冒険者となりギルドで買い取りをしようと思ったが、この間の魔石を売却した時の反応を見て売れないと判断した。
「これを買い取ってもいいのか?」
「是非ともお願いします」
「わかった! セバス!」
「はい、なんでしょうか」
扉越しに待機していた執事はウィリアムに近づくとウィリアムから何か指示をされて部屋を後にした。
「お金の準備は頼んでおいたからエヴァン達とともにまずは宝物庫を見てみるといい」
「わかりました」
俺達はエヴァン達と宝物庫に向かうことにした。
♢
宝物庫は入り口が厳重になっており、執事のセバスがスキル玉を使って何かを唱えることで重い扉がようやく開いた。
「ウィリアム様はここにある物から一つだけ選んでくださいと言っておりました」
宝物庫の中は武器、防具、スキル玉、アイテムなどのカテゴリー毎で分けられていた。他にも家財とかも置いてあったがそっちは俺達に必要がない物だからな。
「んー、ロンとニアは何が欲しいんだ?」
「にいちゃと同じやつ!」
「お揃いの物が欲しい!」
この2人は大きくなっても変わらないのだろう。俺とお揃いのものがほしいって可愛くて仕方ない。
「お揃いならこの辺がいいんじゃないか?」
エヴァンが持ってきたのはネックレス、指輪、髪飾りのアクセサリーだった。
「あー、確かにデザインが同じだからいいな」
俺はアクセサリーを手に取ると鑑定を使用した。
《伝達の指輪》
レア度 ★★★★★
説明 伝達のネックレス、指輪、髪飾りがセットになったアクセサリー。指輪に魔力を通すことで同じ種類のアクセサリーをつけている者に対して直接脳内に声を届けることができる。
持ち主 なし
「これならいいかもな。 ロンとニアはどうだ?」
「にいちゃがいいならいいよ!」
「私も髪飾りがいい!」
どうやら2人も問題ないらしい。ネックレスはかっこいいデザインのため俺が貰おうとしたが、ロンが指輪だと槍が握りにくいと言っていたため俺が指輪をもらうことになった。
俺はロンにネックレスをつけ、ニアの頭には髪飾りをつけた。どちらも似合っておりさらに可愛さが増していた。
「指輪は私がつけるね」
俺はニアに指輪を渡すと薬指に指輪をつけた。
「へへへ、これでお兄ちゃんは私の旦那さんだね」
「はぁーん」
俺はあまりのニアの可愛さに勢いよく抱きしめた。
「にいちゃ、オラは?」
俺の袖を引っ張るロンも巻き込んで2人とも強く抱きしめた。
「ああ、お前ら可愛いな!」
2人の可愛さはこの世界で一番だろう。俺はアクセサリーとともに兄妹からの愛情をもらった。
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